安倍新首相の考え方 著書「美しい国へ」ほか より  
        
                  (文春新書「美しい国へ」安倍晋三著 ・ 文芸春秋:9月特別号 より

  .
美しい国へ  (安倍晋三著)
闘う政治家宣言
闘う政治家・SpeakForJapan
わたしの原点 ・ 自立する国家
ナショナリズム ・ 日米同盟
 . 日本とアジア・中国
少子国家の未来
教育の再生
 . 日本外交大勝利
北朝鮮の真意
靖国参拝 ほか
    特集記事のバックナンバー:      掲示板 (チョット関連の話題ありませんか) 


  「美しい国へ」   (文春新書・安倍晋三著:定価730円より)  
■はじめに :         
闘う政治家・闘わない政治家・・・・・・ 政治家には「官僚派」「党人脈」、「政局派」「政策派」などあるが、わたくしは「闘う政治家」「闘わない政治家」との分け方をしている ・ 拉致問題について声を上げたとき行動を一緒にする「闘う政治家」の数は残念ながら少なかった     
スピークフォージャパン・・・・・・・・・・・ 初当選依頼、「闘う政治家」でありたいと願っている ・ 闇雲に闘うのではなく国民の声に耳を澄ますことなのである     
               
■わたしの原点 :          
「開かれた保守主義」の考え方・・・・・ 昭和29年生まれ、団塊世代と新人類世代の間の「シラケ世代」の生まれである ・ 祖父が「保守反動の権力化」だの言われたので「保守」について関心をもった ・ 年をとるにつれ国とか国家とかを意識するようになった ・ 「保守」といってもアメリカのいう「リベラル」(ニューディール政策後革新派の意)ではない、イギリスの「保守派」の存続しているのに関心があった ・ 過去に生きてきた人たちに対しても責任をもつ ・ 長い歴史・伝統がなぜ守られてきたのかを、プルーデントな認識で考えることが「保守」の精神と思っている     
憲法改正こそが「独立の回復」・・・・・ 51年サンフランシスコ講和条約により、日本は形式的には主権を回復したが、憲法・教育など手足を縛られている ・ 片務的な条約に祖父も闘った・自由民主党の結党のとき、自由党と民主党が議員総数の2/3の賛成をできるようにして、国民自らの手で憲法を作ろうというのが、その合併の1つの理由でもあった ・ 真の独立の回復は後回しになり、高度成長は見事に達成したが、家族の絆、地域への愛着、国に対する想いなどが後回しになってしまったのである ・ わたしが政治家を志したのはほかでもない、こうありたいと願う国を作るためにこの道を選んだのだ 
            
■自立する国家 :     
相手の作った土俵では勝てない・・・ 拉致問題で、平和外交よりも拉致解決を・5人の拉致被害者に日本家族面会よりも拉致被害者を日本へ・帰国拉致被害者の意見よりも日本国家意見を表に出す など強行姿勢で押した ・ ミサイル発射などに対しても、経済制裁で圧す、金正日は政権のつぶれるのを怖がっている・それには経済制裁、海産物の輸入禁止などが効果的である ・ 拉致を追及するのは情けに駆られてではない、拉致は国家犯罪なのである ・ テロリストなどに対しても「日本人に手をかけると、日本国家はだまっていない」という姿勢が重要なのである       
靖国問題はA級戦犯の誤解から・・・・ A級戦犯の判決を受けても後に大臣になり叙勲を受けた重光葵さんもいる ・ 国連の場で、それへの剥奪命令はない ・ 講和条約11条では恩赦・減刑の際には了解を求めることになっているが、拝むこと、靖国に祀ることは禁じていない ・ 敗戦直後マッカーサー元帥がビッター神父に靖国神社をどうするか意見を求めたら、「いかなる国民も国家のために死んだひとびとに対して、敬意を払う権利と義務がある」と提言があり、靖国神社は残った ・ 不名誉なひとびとを含めて戦争犠牲者の先人に弔意を表することは自然であろう     
       
■ナショナリズムとはなにか :   
君が代は非戦闘的国歌・・・・・・・・・・ 日の丸はかっての軍国主義であり、君が代は天皇の御世をさすといって拒否する人たちが教育現場にまだいる ・ 君が代の歌詞は自然と調和し、共生することの重要性と、歴史の連続性が凝縮されている ・ 君から天皇制を連想させる、一時期を思わせると言挙げするが、この歌詞にどこに軍国主義的なところがあるのか ・ 他国の国家には戦闘的なものが多いが、君が代にはない        
郷土愛とはなにか・・・・・・・・・・・・・・ はじめて出会う外国人からは「あなたはどちらから来ましたか」と聞かれる ・ 語学がうまいだけで、深く打ち解けたり心を開いてくれるものではない ・ あなたの文化・あなたの誇りにおもっていること・あなたの帰属母体が大切である ・ 帰属母体それは個人の人生をかけているのだから、ひとは愛情をもって守ろうとする ・ 若者たちが国を愛するようになるには、教育現場や地域で郷土愛をはぐくむことが大切 ・ 国への帰属意識はその延長線上に生まれてくる    
国民のために祈る天皇・・・・・・・・・・ マンスフィールドは言っていた「日本の経済発展の秘密は、国民の安定性を失わない天皇制があるからだ」と ・ 天皇が他の国の国王と違うところは、富や権力の象徴ではないという点、国民の安寧、五穀豊穣を祈る、歌集編纂という仕事もある ・ 外国大使の信任状を受け取る、国会でのもろもろの行事など、奥ゆかしく行われている        
               
■日米同盟の構図 :             
アメリカの普遍的価値観・・・・・・・・・ アメリカ建国の父の一人・トマス・ジェファーソンの独立宣言「すべての人は平等、生存・自由・幸福の権利を神から与えられている」があり、この理想こそがアメリカの気高さだと建国の指導者たちは考えた ・ そのピューリタン的使命感がアメリカ国家を成り立たせている源泉である ・ 自由と民主主義を広めようとの使命感もあり、アメリカは一国で世界の軍事費の40%を占めている ・ 人間には私利私欲があり、激突・破壊的な結末を呼ぶ、それを安定的なものにするには絶対権力の怪物が必要 ・ それがアメリカの使命 ・ 莫大な費用のかかる「スターウォーズ計画」もあってソ連崩壊、冷戦が終わった  
日本国憲法における矛盾・・・・・・・・ 1950年朝鮮戦争勃発で、アメリカ軍の朝鮮への進軍で、手薄になった日本国内をソ連などから守るべく、マッカーサーの命により警察予備隊が組織された ・ 54年に自衛隊発足、以降歴代政府は憲法との整合性を「自衛の軍隊は憲法に違反しない」として成り立たせてきた ・ ドイツは戦後36回も基本法(憲法)を改正し、徴兵制・非常事態対処の法整備まで行っている ・ 翻って日本は安全保障を他国に任せ、物質的には得をしたが、精神的には失ったものが大きい ・ 日本国憲法の枕詞の意味が、日本国民の安全と生存は諸外国にすべてを委ねる、自分たちは列強の戦勝国から褒めてもらえるように頑張りますとのへりくだり文になっている  
行使できない「集団的自衛権」・・・・・ 1960年安保条約改定があった、占領軍から同盟軍に変わり、それと極東地域での安定・米国の国際社会への影響力、経済などなどあって、それはベストの選択であった ・ 安保条約の第5条に「憲法上の規定」が盛り込まれているが、例えばミサイルを打ち込まれたら米軍に依存し戦ってもらうということだ ・ 命をかけて闘ってもらえようか? ・ 現在の憲法解釈では、アメリカは集団的自衛権を行使できても、日本はそれができない ・ 例えば、日本を助けようとしている米軍兵士が海難にあったら日本は米兵を助けには行けるが、他国がそれを攻撃してくれば日本は逃げなければならない ・ 東京湾にテロリストの大量破壊兵器の船がきたら、向こうから攻撃がない限り、こちらからは武力を行使できない ・ などなど矛盾だらけの憲法になっている ・ 日本の集団的自衛権は行使できないものであり(国連加盟国には権利あるものなのだが)、憲法の解釈でしのいでいるが、最早限界にあることお分かりであろう     
              
■日本とアジア・そして中国 :           
中国社会の理想と現実・・・・・・・・・・ 中国は社会主義市場経済の成功で発展したが、国有企業の整理やリストラで失業者が増大することになった ・ 地域所得格差も増えた、都市と農民とでは6倍になったともいう ・ エネルギー、環境汚染の問題もあり、経済政策を急げば急ぐほど理想と現実との乖離が目立つようになっている ・ 国民を引っ張る精神目標のひとつに「反日デモ」があったとも指摘する人が多い  
日中関係の開かれた未来・・・・・・・・ 反日デモがときどき暴徒化するが、日本人は冷静・寛容である ・ 日本人は儒教から礼節を学び、仏教の禅から律する精神を、神道から祖先を尊崇し、自然を畏怖するこころを学んできた ・ 国と国との摩擦が起きようと、親切に接するのが日本人のあるべき態度であり、わたしたちも目指そうとしている ・ 中国へは環境問題・エネルギー問題など支援していけるところが多い ・ 隣接する国なので問題も多いが、経済関係をしっかりさせて、協力関係を維持しなければならない ・ 中国とは互恵関係築くため、もっと中国人に日本を知って貰うよう中国の留学生を受け入れる枠を広げていきたい ・ これらは韓国との関係についても同じである 
新しいアジア外交に向けて・・・・・・・ 中国・韓国とEPA(経済連携協定)の締結をすすめなければならない ・ またメキシコ・シンガポール・マレーシア・タイ・フィリピンの5ヶ国とのFPAの検討もすすめている ・ FTA(自由貿易協定)の枠を超えて、知的財産・労働市場の開放などの連携を強化しようというものだ ・ 日本で教育を受けたい、日本人になりたいとの人がいたら大きく扉を開けたい ・ インドとの経済関係も今後重要になってくる ・ アジアにはAPECのほか、沢山の会議が重層的に存在するが、「開かれたアジア」へのために重要である    
       
■少子国家の未来 :          
わたしの考える福祉のかたち・・・・・・ 最低限度の生活は国がきちんと保障し、あとは個人・民間・地方で作り上げてもらう、「セーフティネット・自己責任」の社会だ ・ 国はそのときの豊かさに応じた社会保障の仕組みをつくるが、血の通った行政サービスが基本である ・ 国民ひとりひとりにあたたかさを持たなければ、ひとは国に責任を持とうとせず国の基盤は揺らぐ
子育ての価値は損得をこえる・・・・・・ メッセージ性の高い少子化対策が必要 ・ 仕事と家庭を両立できる社会にして行かねばならない ・ 父母だけでなく祖父・祖母と一緒にこどもを育てる環境ができるよう税制等の検討をしていきたい            
団塊世代が社会から去ったあと・・・・ 未曾有の少子高齢化社会がやってきても、大丈夫なようには、女性・高齢者が働きやすくすること、労働生産性を上げて巨大市場アジアを抱えて行くことだ ・ だが社会保障の問題は深刻である ・ 2007年〜2010年にかけて団塊世代(労働人口の1割)が60歳になる ・ 2004年に改正高齢者雇用安定法が成立した ・ 企業に定年を延ばすようになったので、ひとりでも長く働き続けてもらいたい      
長生きすると得するのが年金制度・・ 健康保険も公的年金も早死にすると損、長生きすると得になる ・ 民間の保険は逆で、かけたものが返ってくる ・ 公的年金は世代間の助け合いの構造になっているために損得がでる ・ 払わない若い人が多いが、この人たちも65歳からもらい続けて、10年貰えばとんとん、それ以上貰えば得になる ・ 積み立てないリスクは大きい ・ 厚生年金は国民年金よりさらに有利で、平均寿命まで生きると、現在の高齢者で8倍、今年生まれた赤ちゃんも2.3倍受け取れる    
年金が破綻するというのは間違い・・・ 年金制度は5年ごとに保険料の改定を行っている ・ マクロ経済スライドを前国会で取り入れたが、そのようにして破綻させないように常に見直しをしている ・ 年金の収入源を保険料と税金、5部5部がよいと思う ・ 人口の減少を救えるし、世代間の格差の不具合を少なく切り替えができる          
人生のセーフティネットを作らねば・・ 政府が保障するのは最低生活レベル維持の66000円程度であり、その上に厚生年金と厚生年金基金が乗っている ・ 企業によっては厚生年金基金から脱退し、給料を上げるところも出ている ・ 人生のセーフティネット、健康保険・介護保険もあるが、健康寿命を延ばしてその出費を抑える努力をしている            
                   
■教育の再生 :          
教育改革のための戦略・・・・・・・・・・ 教育の目的は志のある国民を育て品格のある国家をつくることである ・ それには教育改革の目標を設定し、法律基盤整備、市町村・学校の権限・責任を拡大、検証する仕組みが必要である ・ 喫緊の課題は学力の向上である ・ ゆとり教育の弊害で学力が低下したが、基礎学力を徹底させる必要がある ・ 学力調査の悪い学校には支援措置を講じ、改善されなければ教員の入れ替えを強制でも行えるようにすべきであろう ・ ダメな教師にはやめていただく
教育は学校だけではできない・・・・・ 学校運営で、校長の権限を拡大し、保護者の参加が求められる ・ 地域のボランティア巡回などが地域で定着してきたが、町ぐるみでのこうしたこどもを守り育てる意識は歓迎である ・ 公教育は地元に根ざしてこそ役割をまっとうできる ・ そしてまた、なによりも大切なのが、家庭での教育、モラルの教育である ・ 若者たちにボランティアを通して、人と人のつながりの大切さを学んでもらいたい ・ 大学入学を9月に改め、高校卒業後3ヶ月間、ボランティアを自発的にするようにあてる ・ 大学入学の条件にしてはどうか  
家族はすばらしいの価値観・・・・・・・ わたしにはこどもがいない、だから余計に感じるのかも知れないが、こどもは親の人生に圧倒的な充足感を与える ・ 家族のいるすばらしさを教えていく必要がある ・ おじいちゃん・おばあちゃんも含めた全部が家族だとの家族観、なかよく暮らすのが一番しあわせとの価値観を守り続けていくべきだと考える        
格差はこていされないように・・・・・・・ 競争には格差がついてくるが、失敗・病気などで不幸になったひとを保障する手当てが必要である ・ 日本はアメリカと違ってむくわれる社会を目指している ・ 警戒すべきは格差が固定されないようにすることである ・ 低所得だとこどもの教育もできないとならぬよう、公費で救済できる教育、バウチャー教育を考えたい ・ フリーター・ニートが問題、彼らを高齢者のデイサービスなどへとの期待が大きいが、かれらの希望をきちっと見極める必要がある ・ 失敗しても再チャレンジできる社会の仕組みを構築する必要がある 
                
■おわりに :              
    この本は政策提言の本ではない ・ わたしが10代、20代のころどのようなことを考えていたか、いま政治家としてどう行動すべきなのかを正直につづった ・ この国を自信と誇りのもてる国にしたいとの気持ちを、少しでも若い世代に伝えたかった          
                
                
  闘う政治家宣言    (文芸春秋9月特別号より)
■ミサイル問題と拉致問題・・・・・・・・ 今までの日本の外交は、国連を含めて、相手の作ったルールに従ってきていた ・ 今回安保理での北朝鮮非難決議を「前回一致」で結論を得たことは大きな外交的勝利 ・ 日本が自ら主導して決議案を提出したのは、国連加盟後はじめてだあった ・ 拉致問題など北朝鮮は嘘に嘘を上塗りしてくる、今回の制裁のような強い「圧力」も必要なのです 〜 〜
北朝鮮の真意と暴発の可能性・・・・・ 93年・94年のノドン発射、2002年・2003年ウラン濃縮をめぐる危機と同じように、今回のテポドン発射も、米国との直接交渉を求めたものと解釈 ・ 北朝鮮からの日本攻撃の心配はない、イージス艦からの攻撃もあり、金正日はそんな自殺行為はしまい 〜 〜    
靖国参拝について・・・・・・・・・・・・・・ 国の指導者が国のために戦った兵士に祈りをささげるのは当然のこと ・ A級戦犯がいるからとて、当時の軍国主義を肯定するひとはこれまで参拝した首相の中にはいない ・ 米国アーリントン墓地にも、奴隷を擁護した南軍の指導者が埋葬されている ・ 死者に対して崇敬と謙虚の念を抱くべきです