株の大底はいつ? 新興国Bricsの状況は如何か? 
                ( 週刊エコノミスト 日本経済新聞 より )

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株の大底の時期予測   Bricsの動きは如何か?
回復へのペースは緩慢
回復へのシナリオ
 企業倒産で尚不況・急回復
 . 新興国も低迷継続か?
 APECでの協調取組みの効果
 中国、インド、ブラジルの潜在力
 . 中国09年更なる下げ日
インドも09年回復期待薄
ブラジルは米国頼み
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  株の大底の時期予測     
■回復ペースは緩慢 :   (週刊エコノミスト12/16号:明治安田生命小玉祐一チーフエコノミスト談) 
不況は拡大している・・・・・・・・・・・ 今や不況は住宅ローンから他のローンへ、大手金融機関から基幹産業へ、先進国から新興国へと危機連鎖が広がっている 
  当面のポイント:米国の政策・・ 米国の財政、金融政策がポイントであるが、米国オバマ新大統領の財政政策に期待が高まっている ・ その規模は7000億ドル(70兆円強)に上る可能性がある ・ ただしこれは株式市場には既に折込済み
    米国の財政赤字増加・・・・・ 異常な水準への財政支援の拡大は財政赤字を増やす ・ 米国の08/10〜09/9の財政赤字は前年同期比3倍1兆5000億ドルになるのではと取りざたされている ・ このため基軸通貨としてのドルがゆらぎ、企業の成長率低下、家計も増税を意識した緊縮へと向う   
    日米でのゼロ金利政策・・・・ 米国のゼロ金利政策で、日欧の中央銀行の利下げに期待が高まる ・ 白川総裁は短期金融市場の機能維持の重視から追加利下げには慎重で、ゼロまで戻すことは念頭にない ・ 米国ゼロ金利の影響で円高→株安が進めば、日銀も追加利下げに追い込まれる可能性はある ・ 欧州もデフレリスクは小さいとされるが、1%台半ばに下がる可能性はある          
グローバルマネーの流れに綻び・ グローバルマネーの潮流も大きく変化している ・ 米国の家計の過剰消費体質に、新興国の生産性向上によりドル高、世界中にドルがばら撒かれて ・ 新興国の外貨準備、欧州の年金資金、オイルマネーなどに姿を変え、米国経常赤字膨張につながった ・ 当初は米国国債の購入であったが、株式・住宅・商品へと次々に主戦場を変えながらバブル的な相場上昇を生み出した  
  基軸通貨世界で支えるが・・・・ こうした環境下、バブルがはじけ、100年に1度の大打撃をこうむることになった ・ そこで世界の金融規制強化がさけばれており、株価上昇を抑える要因になってきている ・ 基軸通貨ドルの暴落を来たしており、各国共通の恐れで買い支えをしているが、グローバルマネーの米国への還流が途絶えた今、ドルの上昇余地は低くなっている    
■回復のシナリオ :   
@09年後半が底・・・・・・・・・・・・・・ シナリオ@(メイン:示現確立60%)としては、米国経済は09年の後半以降ゆっくりと底入れに向うものとみられる ・ とはいえ回復ペースは極めて緩慢なものにとどまろう ・ 日本経済も09年後半に底入れの時期を探る展開となり、1.5%強の成長で景気回復の実感はなきままの状態が続きそう ・ 09年度中は潜在成長率を下回る弱い回復にとどまる
  通貨は不安定な推移を続行・・ 金融危機が最悪期を脱却する過程で、各国の金融機関が決済資金として抱え込んでいたドルを為替市場へ一斉に放出することが予想され、一時的にドル売りがかかることが考えられる ・ その後流動性の吸収がすすみ、ドルは徐々に対円の水準を切り上げてこよう ・ 基軸通貨としてのドルの信認問題はくすぶり続け、年を通じて不安定な推移が続くものとみられる  
A倒産続行ならさらなる低迷・・・・ シナリオA(サブ:示現確立20〜30%)としては、金融危機がさらに深刻化し、大手金融機関や基幹産業の企業倒産が続出するパターンである ・ この場合株価は更なる下落を続ける ・ 米国の長期金利は引き下げられ、1ドル80円に急落、1ユーロ100円割れがみえてこよう ・ 3極通過は「円→ドル→ユーロ」という形になり、円高が更に景気後退を加速させる要因となることが考えられる ・ 景気回復の兆し09年度中にみえず
B各国金融対策で株価急回復・・ シナリオB(サブ:示現確立10〜20%)としては、各国の金融危機抜本対策で株価が急回復、09年の早い段階で景気回復に向けた足がかりが得られるパターンである ・ 長期金利上昇、為替もユーロ→ドルが上昇、最高値に近づくシナリオである ・ 景気は春先以降 
   
   
   BRICSの動きは如何に    
   
■新興国も低迷継続か :     (週刊エコノミスト12/16号:第一生命西浜徹主任エコノミスト談) 
新興国も大幅な調整局面にある・ 昨春IMFが、「新興国の成長の源は個人消費を中心にした内需にあり、先進国が減速した場合でも自立的な成長経路を歩む」と提唱し、新興国の市場活況を後押しした ・ そしてサブプライムでの投資が先進国から新興国に流入し、市場の上昇基調を加速させた ・ しかしそこで金融市場崩壊、新興国への投資は激減、新興国市場は軒並み下落の様相を強めている ・ 先進国からの投資が冷え込むと、新興国の経済環境は一層悪化へと進むことになった       
   新興国が反転するシナリオ・ 新興国が好転するシナリオを考えると、新興国へ流入する投資資金の回復にかかっていおり、やはり米国がそのカギを握っているといえる ・ 11月に開催されたAPECでは、金融危機の収拾に18ヶ月の期限を設け、協調した取り組みがなされた        
中国は輸出成長型から転換・・・・ 上海総合株価指数は、バブル崩壊以降最高値の1/3程度にまで下落した ・ 中国経済は、安価で豊富な労働力という生産要素を背景に「世界の工場」として輸出主導の高成長を収めた ・ しかしバブル崩壊でこの輸出主導の成長モデルを維持することは困難になってしまった ・ 輸出の鈍化は雇用関係にも悪影響が出て、今後の中国は内需、外需ともに減速免れない状況にある  
   09年後半まで株式低下・・・・ 相場反転には米国をはじめとする世界経済の回復、国内消費の活発化が必要であるのだが、国内消費財には価格統制が敷かれており、多くの企業は原材料急騰あっても価格を上げられず、勢いを取り戻すことは難しい ・ 中国の株式市場には流通株(A株市場:国内投資家向け と B株市場:外国人投資家向け) ・ 非流通株(政府が保有する株式)があって、非流通株は09年度に大量に市場流出がある予定ではあり、09年の株式はさらなる下押しが高まるものとみられている    
インドも投資回復が期待薄で低迷 インドは08年年明け直後に市場最高値をつけたが、新興国を震源とする世界同時株安を受けて政府が市場参加者への規制を強化し、投資が手控えられるようになった ・ また資源価格急騰にともなうインフレから底堅く推移した内需も頭打ちとなり、下落基調を強めた          
   ITは欧米市場悪化で低迷・・ 市場を押し上げていたIT関連は、コスト競争力の問題と欧米景気の悪化で、収益が悪化しその株式には売り圧力が強まった ・ こうしたことから最高値からの下落率は6割にもなっている  
   人口から中長期的には良・・ インド経済は製造業を中心にグローバル戦略の中で地位を高めつつある ・ 日本を中心にデリー・ムンバイに開発支援が行われており、インフラの整備、人口の増加などから安定的な成長が見込まれており、中長期的には依然潜在性は高い ・ それには海外からの投資が不可欠であり、世界経済の回復が必須である ・ 11月末のムンバイでの同時テロも影響し、09年の回復は期待薄  
ブラジルは資源下落が下押し・・・ ブラジルはかってのハイパーインフレ(物価が100倍以上になる最悪インフレ)を克服し、消費者が借り入れによって力強い消費を行い、底堅い経済成長を続けてきた ・ しかし年明け以降商品価格の高騰は、市民生活にはインフレとなり、金融当局は急激な引き締め姿勢に転換した ・ そこに世界金融危機が発生し、先進国からの投資が流出することになった ・ 国内金利が高止まりしたことで、海外の低金利通貨でのキャリー取引であったことも下落に拍車をかけることになった     
   ブラジル経済の行方は不良・ ブラジル経済の行方をみると、金融危機にも拘わらず金融当局は金融引締めをしており、その結果これまで成長を牽引してきた消費が頭打ちになってしまっている ・ また海外からの投資も期待できず、資源価格の下落も下押しに拍車をかけている ・ 従って内需も外需も厳しい状況にあり当面下落基調が続くことになろう ・ 特に石油国営公社(ペトロブラス)や鉱業大手のヴァーレの株価との関連性が高く、世界的な原油需要の回帰には米国経済の回復が欠かせないことから、09年後半にかけて弱含みの展開になろう         
■それでも沈没しな中国経済の底堅さ :   (週刊エコノミスト12/16号:多摩大学沈才彬教授談)          
米国一国支配に限界・・・・・・・・・・ 経済のグローバル化で米国を中心とする資金の循環を作り出したが、信用収縮の連鎖を招くことになった ・ 一極支配では秩序が保てないことが明らかになった ・ 世界の再編は避けられないが、問題は米国に変わる勢力が見当たらないことである  
   これまでの中国は輸出依存・ これまでの中国の高度成長は輸出依存型とされる ・ 金融危機で輸出は鈍化し、経済成長も9%へと急降下している ・ とはいえ中国経済は挫折するシナリオはないと筆者は考える ・ 中国ではこれまで幾多の政変があったが政変が起こらなければ成長をし続けている ・ 五輪の成功により胡錦涛政権は安定しており、米国発金融危機の影響だけでは、経済沈没にはならない
GNP8%成長が死守ライン・・・・・・ 世界金融危機で諸外国が60%以上成長率低下をしているなか、中国はなお9.7%の成長をキープしている ・ 米国に代わりエンジンになっている ・ 中国政府は経済成長率8%を死守ラインとみなしている ・ 成長率が8%を下回ると中小企業を中心とする企業倒産が急増する ・ そこで中国は10月9日に10年末までに総額57兆円を投じ、安価な住宅建設、インフラ整備、地震復興事業、企業減税などをすると打ち出した ・ これは世界経済への下支え効果も期待される   
   要注意は2013年・・・・・・・・・ 中国では2010年に上海万博が開催され、それまでは8%が維持されると思われる ・ 問題はその後で、不満の矛先は格差問題と政府幹部の腐敗に向けられよう ・ 2013年が要注意の年と考えるのは次の3点からである ・ @2013年は政権交代の年で権力闘争が起き易い ・ A中国のGDPは世界第2位となり米国によるチャイナバッシングの恐れがある ・ B政治の民主化運動がそろそろ起こりそうな時期である ・ 中国の工業化と都市化は今後も進むであろうから2020年までのGDPは年平均2〜7%での成長が続くものとみる  
■インド危機克服への道 :   (日本経済新聞12月10日より)  
インド売り込みスピーチ・・・・・・・・・ 金融危機による信用収縮であり、アジア各国は外貨準備、経常収支、財政、消費の面でまだ健全である ・ GDPは2%ほどに低下しそうであるが、国内消費は健全で経済パニックになる要因はなさそう ・ インド経済は外貨が牽引役であるが、高い貯蓄率を国内資金だけで充分な流動性を維持、GDP7%を確保できるであろう ・ 成長率を9%にするには外国からの投資が大切と考える ・ 2009年は景気後退が続くが、2010年には底入れし、アジア新興国のインフレも沈静化して、アジアは相対的に高い成長率に戻るはずだ (ナラナヤンインド銀行会長談ほか)
   民間投資でインフラ整備を・・ インフラ整備がインド成長のキー、最近民間投資がインフラへと円滑に流れるようになった ・ 経済の停滞はあるが長期的にはインド経済へ投資家は前向きである (MKシンハIDFCプロジェクト社長談)            
■ブラジル経済の変調 :   (日本経済新聞12月11日より)       
輸出減、雇用減から消費減・・・・・ 新興国の中では健闘してきたブラジルだが、金融危機の影響が及び始めている ・ 資源価格の下落を受け、鉄鉱石世界最大手のヴァーレが人員整理を始めるなど、雇用、経済へと影響が及んでいる ・ ルラ大統領が懸念するのは輸出環境悪化に伴う雇用調整の動き、主要輸出先の中国の景気減速などで減産を強いられていることが響いている ・ ルラ大統領は更に悪化させないよう、消費を止めぬよう国民へ呼びかけている    
   牽引役は内需の持続・・・・・・ ブラジルの金融機関は金融危機の影響が比較的軽微であったが、10月ごろから融資に慎重な姿勢(高金利)にあり、企業が借りにくい状況が続いている ・ 7〜9月期のGDPの伸びは6.8%と高水準を維持していたが、その後外需減退で下ぶれのリスクが高まっている          
                   
■オバマ変革反動のリスク :   (週刊エコノミスト12/16号:三菱UFJ証券藤戸則弘投資ストラテジスト談)          
底打ち感なくば失望相場に変る オバマ次期大統領の政策は@金融危機の克服でありA米国の富の再配分にあるといえる ・ オバマ氏はハーバード大学在籍中低所得者層のための支援をする市民運動家であった
   大投資の反動、国債切下げ・ 道路、橋梁といった旧来型の投資に、環境による雇用創出をうたっている ・ クリーンエネルギー、プラグインハイブリッド車などの投資をとのことであるが、7000億ドルの包括景気刺激策が検討されている ・ 21世紀最大のニューディール政策になろうとしている ・ しかしこの財政出動は過去最悪と喧伝されたレーガンの双子の赤字(財政と経常収支の赤字)がGDP比60%にであったのだが、これを更新する可能性がある ・ 一歩間違えば米国債の格下げ、ドル急落という強烈な副作用を内包している