世界金融危機 何が起きたのか、今後何をなすべきか 
                

  .
世界金融危機への経緯 資本主義は本質的に不安定
今、何をなすべきか
米国は世界最大の借金国
ウォール街金融ゲームに問題
日本は日本でカネを使おう
 . ケインズからフリードマン思想へ
資本主義は投機である
パッチ修正・セカンドベストで進む
 . 帝国循環は潰えた
日本の銀行は潰れない 
米国住宅回復は短そう
     特集記事のバックナンバー:       掲示板 (チョット関連の話題ありませんか) 


  世界金融危機 何が起きたか  (朝日新聞10月18日より、山田厚史記者談)  
世界経済の構造が変化???・・ 世界金融危機の始まりは住宅バブルの崩壊でした ・ 米国の証券会社や銀行が連鎖して倒産、金融市場が麻痺してしまいました ・ 世界経済の構造や価値観が変化していくかも知れません ・ バブル崩壊への経緯と今後の予想は・・・
   
■バブル崩壊への経緯 :   
米国は世界最大の借金国・・・・・・ 政治力も軍事力もずば抜けた国家、米国にこれまではカネが集まり繁栄が続くといった構造であった ・ 流れ込むカネで消費が活気付き、外国から物資や製品を買い捲り、代金がまた流れ込んだ ・ 外国からの投資でもって黄金の循環がもたらせられたのであって、元は世界からの借金での循環、そして米国は世界最大の借金国になってしまったのである ・ 国家間の貸借をみると、米国は302兆円の債務(借金)超過になっており、最大債権(貸し出し)国日本をはじめ、アジアや欧州から巨額の借金をして繁栄してきたことが分かる  
   米国は世界マネーを浪費・・・ 米国の製造業は競争力を失い、今や車や家電品、衣料品などは外国製品に頼っている ・ イラク派兵で出費もかさみ、国際収支、借金は膨らむ一方である ・ しかしこの債権は回収ができないのが通例であり、このゆがんだ世界の構造はいつか破綻すると心配されていた   
   ウォール街に問題があった・・ 世界からマネーを吸い込んでいたのはウォール街である ・ 米国は金融立国として繁栄し、金融の自由化を世界に広めた ・ コンピュータを使っての複雑な金融商品を開発し、そのやり取りがされるようになった ・ 世界中が低金利政策に協調し、借金マネーで増殖し金融市場が膨らんでいった ・ 米国に集まった資金は益々バブルとなって、向った先が住宅市場であった      
■悪質ローンが世界に拡大 :          
住宅バブルが膨らんで行った・・・・ ローンに慣れた消費者は住宅を担保に車や家具を買った ・ 住宅の価格が上がり、担保価格も高くなって借金も膨らんでいった ・ 住宅は活発に売れ、00年頃から価格も急上昇した ・ GDPの70%を占める個人消費を住宅バブルが押し上げた(日本にも似たバブルを経験した) ・ サブプライムローンで加速させた 
バブルがはじけ経済は失速・・・・・ 住宅バブルがはじけ、住宅価格が下落すると米国経済は逆回転を始めた ・ 担保価格が下がり、クレジット消費にブレーキがかかり、自動車販売など激減、米国の消費が冷え込んでしまった    
   金融機関が破綻した・・・・・・・ もう一つの逆回転が金融界で起こった ・ 金融工学を駆使した住宅の証券化でサブプライムローンが世界中にばら撒かれた ・ 悪質なローンがどんどん取引されていった ・ そのバブルもはじけ、銀行や証券会社が破綻、そして住宅金融公社や保険会社へと飛び火した ・ そして世界株安へと傷口が広がって行った 
米国政府対策も焼け石に水・・・・・ 米国政府が不良債権の買い上げに7千億ドル用意しても市場の不安は収まらない ・ 不良債権を政府が買い取れば損害は縮小されるが、銀行の債務が増え、資本が小さくなって、貸しはがしが横行する ・ 大手は日本などへ増資を求められるが、多くの銀行は公的資金の受けることになる ・ ドルを扱う市場は凍りつき、世界的規模で貸し渋りが始まり、倒産企業も増えて行きそうだ ・ カネを吸い込むウォール街の機能が崩壊した  
   米国向輸出企業に大打撃・・ 米国に依存する経済は限界を迎え、各国破綻に輸出縮小に深刻になっている ・ 欧州では金融破綻、中国でh住宅バブル崩壊価格急落、中国の輸出に頼る国有企業も打撃を受けている ・ 日本も米国向けに生産設備を中国に作るなどしてきたが、過剰設備が問題になるであろう     
       
■日本人は日本でカネを使おう :   
日本での需要構造を作ろう・・・・・ これまで日本は貯金通帳が大きくなり、米国のように使ってばかりではなかった ・ そのカネを米国の集金装置に投資するなどもしていたが、これからは国内で使って豊かになる仕組みを作れるとよい ・ カネを回すべき先は沢山ある ・ 医療、介護、エネルギー、環境、循環システムなどに投資、国を上げて取り組めば、新しい需要が創造されるはずである      
   世界不況は人類思考の時・・ 1928年の世界恐慌の行き着いた先は第二次世界大戦であった ・ 戦争と言う巨大な需要で米国は不況を克服し世界の中心に躍り出た ・ 戦争による乱費か、新エネルギーなどへの需要創造か、世界不況は人類を試そうとしている    
               
               
  資本主義は本質的に不安定  (朝日新聞10月17日より、岩井克人東大教授談)         
      
■経済学の変遷 :          
恐慌からケインズ思想・・・・・・・・・ 経済学者のケインズは、「市場経済は不安定であり、政策によるコントロールがある程度必要である」と考えた ・ 世界恐慌のあと、これが米国の政策の柱になり成功したが、政策の行き過ぎで景気対策のための国家機構が肥大化しすぎた
ミルトン・フリードマン思想・・・・・・・ そこで60年代から英米を中心に、フリードマンを中心とする新古典派経済学が注目されるようになった ・ 「市場経済は国家の介入や規制を出来るだけ少なくし、純粋化すればするほど効率化と安定化が達成される」とする考え方である ・ 80年代のレーガン政権やサッチャー政権の経済政策がその裏づけとなり経済学の主流派地位になった ・ それを極限まで推し進めたのがブッシュ政権であった          
   ブッシュ政権で自由奔放へ・ ブッシュ政権では規制をなくし、負債でもなんでも証券化し、世界のあらゆる部分を市場で覆い尽くそうとした ・ 新古典派の考える理想郷をつくる壮大な実験がグローバルな規模で行われた ・ その実験は90年代後半のアジアの通貨危機でほころびが見えていたが、今回の危機で実験は破綻した     
        
資本主義は投機である :          
資企業の生産も一種の投機・・・・・ 資本主義はすべからく投機で成り立っている ・ 自動車会社は将来誰かが買ってくれであろうとの予想のもとに自動車を生産する ・ ここには一種の投機要素が入っている     
   金融市場は投機で動く・・・・・ 株式、債券、為替といった金融市場は、実需とは関係のないプロの投資家や投資ファンドの思惑で動いている ・ ほとんど投機によって動いている        
貨幣それ自体が純粋な投機・・・・ 貨幣の存在は物々交換の手間を省き、経済を大いに効率化した ・ しかし貨幣そのものには価値がない ・ 貨幣は何かと交換して受け取ってもらえると予想しもっているにすぎない ・ 今回の金融危機にはこの貨幣の問題のエッセンスが入っている       
   サブプライムは騙しの手・・・・ 震源のサブプライムローンは、信用度の低い人に貸すリスクの非常に高いローンである ・ 1件1件みると危険性があるのだが、それらローンを束ねて証券化され、他の金融商品とからめたり、世界中にばら撒かれなどして危険性がみえなくなってしまった ・ これらの商品は貨幣のようにいつでも換金できると思われた ・ 人々が最も信用する貨幣のようにまで見えてしまった ・ 多くの人が信頼するから大丈夫とする自己循環論法が作用した     
   機軸通貨ドルの信用に不安・ 駆っての世界恐慌はグローバル化はしなかった ・ 今回の恐慌はグローバル化しており、基軸通貨の価値が大いに揺るぎかねないか心配なとことである ・ ドルへの投機、今後不安定な問題隠されていたが、今後表に出てくるかもしれない   
                   
セカンドベストを目指すしかない :         
この先どうすればいいのか・・・・・・ 資本主義社会は本質的に不安定なものである ・ 危機の度に国家資金の注入や、ある程度の規制などをするパッチワークをしていくしかない ・ 見通しは暗いように見えるが、経済はバブルの発生と崩壊を繰り返しながら確実に効率性を増している ・ セカンドベストを求める実践主義で行かざるを得ない
   アダムとイブの喩えでいうと・・ 資本主義の中で人々は自由と言う禁断の果実の甘さを知ってしまった ・ その甘さの中には不安定さが含まれているが、自由を手放すことはできないので、このまま行くしかなかろう  
            
     
  今、何をなすべきか    (日本経済新聞10月19日〜21日より)
                
■柳沢伯夫氏談 : (自民党金融危機対応プロジェクトチーム座長)            
帝国循環は潰えた・・・・・・・・・・・・ 昔「帝国循環」と言っていた人がいる ・ 米国は大帝国で、どんなに赤字を出しても埋め合わされ世界経済は回っていくと言われた ・ 米国経済の経常赤字、財政赤字は巨額で、帝国循環は永遠に続こう筈がないことに世界が気づいた          
首相は1928年と同じと言ったが・・ 麻生さんはそう言ったが、今回日本が受けた被害は小さく、1928年ほどの影響はない ・ 資本注入するなど、28年当時のように自由奔放にはしていない            
10年前の日本の危機との違いは・ 日本の場合は貸付債券の焦げ付き、今回の問題は証券化商品であり、金融と産業が一体になってのもので、再生を難しくしている            
検討中の経済対策・・・・・・・・・・・・ 金融機関が資金繰り破綻をしないよう日銀が流動性を供給する ・ つぎに企業の資金繰り破綻を防ぐために信用保証額も必要に応じて増額する ・ 政府系機関からも必要な資金を供給する    
海外のように預金の保護は・・・・・・ わたしは必要ないと思う ・ 資本注入や流動性供給をするので銀行がつぶれることはない ・ 日本の預金者は慌てる必要はない ・ もし心配であれば決済用預金に移しておいてもらえれば完璧に保護する    
税制面の対応は・・・・・・・・・・・・・・ 現行の証券優遇税制は維持していくのがよい ・ 実体経済の対策としては所得税・住民税の定額減税をうつ ・ 迅速的に戻し減税的なものにする    
        
■岩田一政氏談 :  (内閣府経済社会総合研究所長)
米国の混乱はいつ終息するか・・・ 住宅価格指標S&Pケースシラー指数が2006年から21%も下がった、先物指数をみると10年初めまでにさらに15%下がる ・ 住宅市況の回復は09年度になりそう    
米国も日本のように長期低迷か・・ 日本の土地価格は15年間下がり続けた ・ 米国のケースシラー指数が正しければ日本よりはかなり短い  
■御手洗冨士夫氏談 :  (日本経団連会長)       
来月のG8+新興国サミット・・・・・・ ワシントンでのG7サミットで金融不安は一応やわらいだが、次のサミットは世界を金融破綻から守る対策の確認作業 ・ 公的資金注入や預金保護などの国際協調が必要になる ・ 今回の危機の病巣は金融システムにあったが、こんごは規制や規則の強化をしていくことであろう    
        
■リンク集 :    日米経済の回復時期予想(ロイター) ・ 金融危機時リスク投資には限度(ロイター) ・ 米国金融危機のブラジルへの影響