地球を救うバイオマス ・ 植物力、遺伝子組換えに理解を 
        
                  ( 新潮選書・新名惇彦著「植物力」・日本経済新聞 より 

  .
人類を救うバイオテクノロジー  
世界と日本の取り組み
地球資源は枯渇して行っている
 人口増、食料・水・エネルギー危機
人口増に必要エネルギーを植物で
 . 遺伝子組換えにより解決
 作物生産量・水と環境問題を
バイオマスで地球を復活させる
 . 国内におけるバイオの取り組み
 バイオエタノールでの取り組み
リンク集(国内と海外の動向)
     特集記事のバックナンバー:       掲示板 (チョット関連の話題ありませんか) 


  人類を救うバイオテクノロジー  (新潮選書・新名惇彦著「植物力」より)   
■地球資源が枯渇していく現状 :   
深刻な2050年問題・・・・・・・・・・・・ 2050年には世界の人口は90億人に達する、それに備えての食糧問題がある。 それと、その頃には石油が底をついている。 地球温暖化により、酸性雨・重金属汚染などなどの環境問題も深刻になっていよう。 そして案外忘れられているのが鉱物資源の枯渇である。(金と銀はあと20年、銅とマンガンは30年、錫とニッケルも40年しか残っていない)        
   地球人口に必要な資源量・・・ 人口が1.5倍になると、食料生産は1.5倍ではなく、家畜が増えてその穀物が必要になるので、食料生産は3〜4倍にしなければならない ・ また地球の定員を考えるのにはエネルギー供給面からの検討も必要である ・ 現在世界での年間エネルギー消費量は石油換算で84億トンであるが、環境破壊をしない限度は50億トンであって、今より増やすことはよくない(米国人は一人当たり年間8トンも、欧州と日本人は4トン、インド人は0.3トンを使用している)    
   食糧危機を加速する肉食・・・・ 従って、肉食嗜好が食糧危機を加速しているのだが、20世紀に世界人口が16億人から60億人に爆発的に増えたのは、この食料増産があってのことだった ・ 灌漑利用農地面積などが10倍も増えた ・ 植物の品種改良も行われトウモロコシなどではたんぱく質含有量が20倍にもなった ・ しかし何事にも限界がある ・ 熱帯雨林、森林緑地は減少し、淡水も減少、土地は痩せてきた ・ ともこと、或いは異常気象もあって1990年頃からは穀物の生産量の伸びが少なくなっている ・ その一方で、先進国では穀物の2/3が動物の飼料になっているのである   
   限界にきている水資源・・・・・・ アメリカ農業の悩みは水である ・ アリゾナ州やカリフォルニア州の南西部、砂漠のようなところでトウモロコシや小麦が栽培されているが、降水量だけでは不足で地下水が使われている(使った地下水は7000年分の降水量) ・ 中国の大黄河も河口1000Kmが干上がっている、カスピ海の東・アラル海も1/2が干上がった、みな人口の増加と工業化乱開発のためである ・ 人口が2倍になると水は6倍必要といわれるが、食料・環境問題の前に水不足が問題だと指摘されている      
   
 ■食料・環境問題解決に植物力 :          
人口の増加に対処するには・・・・・・ 2050年90億人を養うには現在の植物生産量を3〜4倍にしなければならない ・ @耕地面積の拡大は期待できない ・ A単位面積あたりの増収は如何か(農薬、灌漑設備などでの品種改良、大規模機械化などで収穫効率は上がってきた・今後は途上国でもとのことになる) ・ B前記2つは悲観的であるが、期待できるのは作物の改良である(作物は害虫、雑草、病気、環境などで収穫率が30%程度であるが、これを高めることにより生産量を上げることが期待できる ・ 交配育種などによりストレスに強い作物を育てることである ・ しかしこれには100年単位の時間が掛かるので間に合わない)
   人類救世主は遺伝子組換・・ この危機を救うのがバイオマス(再生可能な植物由来の有機性源)での遺伝子組換えの技術である ・ 人医療では人の成長ホルモンや血糖値を下げるインシュリンをつくる遺伝子を大腸菌に入れることができて、その医薬品が安く大量に販売されるようになったが、植物にも多数応用されてきている ・ これまでの交配は近隣の作物の間でしかできなかったが、遺伝子組換えはあらゆる生物の遺伝子を使える(世界一の嫁を迎えられる)ので、品種改良がよく、また速い ・ 遺伝子組換えについてやさしく解説   
遺伝子組換えの成功例・・・・・・・・・ 雑草だけを除去する農薬、病原ウィルス細菌につよい作物 などをつくる遺伝子組換えは比較的簡単につくられている ・ ウィルスは単純な構造で、ウィルスの遺伝子の本体はタンパク質で覆われておりこれを植物に組み込むことができて、他のウィルスを受け付けにくくできる ・ 植物であれ動物であれよいものを利用していける(ウサギの抗菌活性ペプチドの遺伝子を植物に入れるとカビに抵抗のあるものが作れる) ・ 実用化されている遺伝子組換えの作物の例について下記する ・ 遺伝子組換え技術とは ・ 酵素により遺伝子を組み換える ・ 細胞>染色体>DNA>遺伝子(ゲノム)>アミノ酸>核酸(A・T・G・C) 
   除草剤抵抗性の大豆・菜種・・ よい除草剤の開発により、農家のひとはやっかいな草取りをしなくて済むようになった ・ 遺伝子組換えで作った除草剤(グリフォセート)は、選択的除草の必要がなく、食しても人体に影響がないので経費節減になっている ・ しかしアメリカの課題は、風や水で表土が失われ土地が痩せていくことであり、土地を耕すと表土が益々失われ問題である ・ そこで不耕起栽培というのが考えられ、畑を耕さずに種を蒔き、除草剤だけを使って作物を育てるとの方法が始まっている、   
   害虫・病気に強い作物・・・・・・ 植物もウィルス、カビ、細菌によって病気になる ・ 病気に強い作物への遺伝子組換えも盛んに行われている ・ ハワイオアフ島のパパイアはアブラムシによる細菌により大打撃を受けたのだが、91年に遺伝子組換えに成功し、以降生産が復帰した ・ この他遺伝子組換えにより、害虫に強いもの、栄養価の高めてのものなど成功し、栽培されている  
これからの課題と遺伝子組換え・・ 人口増加、地球環境の問題 と 遺伝子組換え技術        
   作物の生産性を高める・・・・・・ 植物の生長を早めるための遺伝子の研究は進んでおり、食料生産量を数倍に高めることはそれほど難しいことではなさそうである    
   水問題と植物バイオ・・・・・・・・ 水問題で解決したいことは、乾燥で強い、水なしでも育つ植物を作ること、海水でも育つ植物を作ること、汚れた水を再利用して利用することなどである ・ 都市下水の処理は3段階からなる(@固形物の沈殿取り除き・A上澄みに含まれる有機物を活性汚泥により分解する・B窒素・リン・色・有害物質の除去:都市の下水はこのようにして河川に放流されている) ・ 3次処理をしないで流すと、窒素やリンが残り藻や水草ができてしまうのだが、この処理までできていない小規模水処理場は結構多い     
   環境問題と植物バイオ・・・・・・ バイオマスを使って、汚染物質からリンや重金属を回収し、資源に返すという試みがなされている ・ 下水処理水にカルシウムを加えてリンを取り除くことができる ・ 遺伝子組換えで処理用の微生物を作ることには問題があるが、分解処理のできる植物を遺伝子工学で作ることは、植物は固定して見えるものであるので、許されよう ・ 重金属汚染に活用できる植物も見つかっている      
■植物力で地球を復活させる :            
植物力(太陽エネルギー)使用 石油はあと40〜50年分しかない ・ 今世界のエネルギー消費量は2.9×10の20乗ジュールでその殆どを化石燃料からとっている ・ それに対し、太陽から地球・地表に給されるエネルギーはその10000倍、そして植物などに光合成などで吸収されるエネルギーは10倍もある ・ 植物バイオマスを使えばやっていける計算になる ・ 日本政府も地球温暖化防止、循環型社会の形成、農林漁業の活性化にむけて、「バイオマス・ニッポン総合戦略」を閣議決定し、省庁横断的にして取り組み始めた   
   未利用バイオマスの活用・・・・ 世界のバイオマスの利用率は、食料・牧草・パルプ材・繊維類・建材などを合わせても7%であり、森林として生態系の維持に必要なバイオマスを考慮しても40%であり、利用されてないバイオマスは全植物バイオマスの60%にもなっている ・ この未利用バイオマスの活用がキーになる ・ 未利用資源の大部分は植物細胞の外層の部分、セルロースにある ・ セルロースは澱粉と同じくブドウ糖からできていて、セルローズはセルラーゼ・澱粉はアミラーゼとの酵素で分解消化される ・ セルラーゼはカビや細菌、草を食べる牛などは持っているが人間にはない ・ この酵素の研究が進み、バイオエタノールなどができるようになってきた  
   バイオマスの転用・・・・・・・・・・ 廃棄物バイオマスの活用には、廃棄物の輸送費をかけぬようにするため、小さなプラントを各所に配置することが必要である ・ これで大企業が取り組んでいるのが澱粉作物や大豆などの油糧作物である ・ 油糧作物から油を取ったり、発酵させて乳酸をつくりプラスチックにすることもできる ・ これら作物を大規模に栽培し利用することが講じられている ・ 澱粉作物はトウモロコシ・小麦・米が多く、じゃがいも・さつまいもなどがこれに続いている
   国家プロジェクトを・・・・・・・・・・ 既に述べたように、地球上で年間に生産される植物バイオマスのエネルギー量は、人類の消費している全エネルギー量の10倍ある ・ 石油エネルギーの10倍あるといってもよい ・ 植物生産量を10%増やせば石油がなくても現状維持できることになる ・ 遺伝子組換えにより植物生産の効率性を高めることにより、その可能性はある ・ しかし日本では遺伝子組換えに抵抗をもつ人がおおいのでそれに安全性を説明すること ・ また産学共同で、バイオ技術の競争力を高めることが、これから極めて重要な戦略である  
       
       
  和製バイオの動き    (日本経済新聞 1月1日 より)
  
■重油を減らしバイオ燃料を  「重油の使用割合を限りなくゼロにもっていきたい」 ・ 製紙業界では紙の乾燥に多量の燃料エネルギーを使用する ・ これまで重油に頼ってきたが、これに替わって都市ガス、廃タイヤ、廃プラスチックなどを増やしている ・ 日本製紙ではこの転換により年間170億円のコスト削減を実施している ・ だが天然ガスも化石燃料であり、廃タイヤなどのリサイクル燃料も炭酸ガスを発生する ・ そこで注目されだしたのがバイオマス(生物資源)燃料である  
バイオマスへの国内の取り組み・・・ 森永乳業神戸工場では、コーヒー豆のカスの処理が頭痛の種であったが、原油高で燃料に使うようになり年間5千万円の経費節減をした ・ 電力会社もバイオエネルギーを使い始めた ・ 北陸電力は木屑を年間2万トン使用、関西電力は石炭火力発電所で木質ペレットを導入して炭酸ガスの発生量を削減している ・ Jパワー(電源開発)では下水処理場の汚泥を廃食用の油と混ぜて使用しており、東京ガスは港湾内に溜まった海藻ごみを発酵させそのガスを発電に使っている 
■コメからエタノール :          
日本の各地でバイオ事業・・・・・・・・ 日本の各地でも地産地消をめざし、地方自治体や企業が「ローカルバイオ」の取り組みを加速させている 
   新潟ではコメから・・・・・ 新潟全農協はコメを原料とするバイオエタノール工場をつくる ・ 北海道の農協中央会ではてん菜や小麦でのエタノール工場を、沖縄ではサトウキビからエタノールを精製することを、宮崎県では焼酎製造業者が焼酎カスを原料としてエタノールを生産することで、それぞれ進めている 
■リンク集 : 
和製バイオの取り組み・・・・・・・・・・ 日本バイオベンチャー推進協会 ・ 日本バイオインダストリー協会 ・ 大学発バイオベンチャー協会 ・ 日本バイオプラスチック協会 ・ 北海道バイオ産業振興協会 ・ 首都圏バイオネットワーク 
外国でのバイオのニュース・・・・・・・ 米国におけるバイオマスの利用動向 ・ 世界市場報告(バイオテクノロジー) ・ 欧州のバイオマスエネルギーの概観 ・ 国際バイオ見本市