ノーベル賞受賞 4氏の素顔と功績をわかりやすく 
                

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ノーベル賞受賞4氏の素顔 4氏の理論をやさしく
益川敏英さん、小林誠さん
南部陽一郎さん
下村脩さん
 . 物質の質量は対称性の破れから
基本粒子クォークは6つある
蛍光蛋白の発見で生命観察に革命
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  ノーベル賞受賞の4氏の素顔     
■4氏の略歴・素顔 :   (朝日新聞・日本経済新聞・読売新聞) 
益川敏英さん・・・・・・・・・・・・・・・・・
1940年名古屋市生まれ、1967年名古屋大学博士課程終了、京都大学名誉教授、名古屋大学特別招へい教授

益川さんは大の英語嫌い ・ 論文の英訳、海外での講演もいつも小林さんがしていた ・ 12月のストックホルムでのノーベル賞授賞式が初の海外になる ・ 出席を聞かれると「まぁ、しゃあないでしょうな」と苦笑していた

益川さんは小学時代から理科・算数が得意であった ・ 高校時代に故坂田昌一教授の存在を知り、「自分のいる名古屋で科学がつくられているんだ」と興奮、将来の道を決めたとのこと
小林誠さん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1944年名古屋市生まれ、1972年名古屋大学博士課程修了、高エネルギー加速器研究機構名誉教授

小林さんは海部元総理のいとこ ・ こどもの頃父親をなくした小林さんは海部元総理の名古屋市の自宅に暫く暮らした ・ 「年下であったのでマー坊と呼んで可愛がった。 男の子にしては大人しく、いつも難しい本を読んでいた。天才に突然変異する芽はその頃からあった」と海部元総理は振り返る
南部陽一郎さん・・・・・・・・・・・・・・・
1921年東京生まれ、1942年東京大学物理学科卒業、米シカゴ大学名誉教授、大阪市立大学名誉教授、1970年米国籍取得、1978年文化勲章受賞、シカゴ在住

南部さんは東大にいた1949年、発足したばかりの大阪市立大学に招かれ、若干29歳で教授になった ・ 大阪市立大の理工学部は基礎科学に多額の研究予算を投じ、広く俊英を集めた ・ 結果他大学の学生も大阪市立大の研究室へ「武者修行」といって出入りした ・ 5歳年下の小柴ノーベル賞受賞者もその一人であった
1952年朝永博士の推薦で渡米したが、そのとき既に天才的な物理学者として南部さんは米国でも知られていた
下村脩さん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1928年京都府生まれ、1951年長崎医科大学付属薬学専門部卒業、1963年名古屋大学助教授、1982年米ウッズホール海洋生物研究所上席研究員、2001年から米マサチューセッツ州の自宅で研究

「日本の歴代の受賞者は有名大学の出身者ばかりだが、自分のように地方大学の出身者でもノーベル賞をとれると励みになるのでは」と語る
また「後進の研究者には、難しい研究課題を避けたがる傾向にある、特に男性が情けない ・ 興味ある課題を見付けられたら、あきらめず最後までやり遂げてほしいものだ」とも語った
               
               
  4氏の理論をやさしく     
              
■小林氏と益川氏の新理論 :           
クォークに6種類あると見抜いた・・ 物質の最小要素は、水素や炭素、酸素といった元素で、それを構成している原子が根源と考えられていた ・ 原子には電子と原子核があり、原子核には中性子と陽子があり、その中にクォークというがあって陽子や中性子を作っている ・ そのクォークには6種類あることを益川博士と小林博士が見抜いた  
物質を細かく細かく分解すると・・・
(解説図:朝日新聞10月8日より)
18世紀から19世紀にかけて、水素・酸素・炭素などが物質の根源と考えられた ・ 19世紀末から20世紀前半にかけては原子には殆どの質量をもつ原子核があり、その周囲に電子が回っていることが分かった ・ さらに原子核はプラスの電子を帯びた陽子と電気を帯びていない中性子からできていることが分かった ・ 20世紀後半に入って、陽子・中性子・電子の仲間とみられるものが100種類以上発見され、陽子や中性子はクォークと呼ばれる基本粒子の組み合わせで出来ていることが分かってきた ・ クォークには6種類あるといわれる 

原子核は陽子と中性子でできているが、1932年に中性子の存在が確認された後、新たな粒子が続々と見つかり、湯川博士が中間子の仲間の存在もあると発表した ・ 数々の粒子の発見の続く中、1964年米国マレー・ゲルマン博士は、クォークという基本粒子を提唱した 

小林さん、益川さんの受賞理由は、宇宙の成り立ちにかかわる「CP対称性の破れ」という現象が起きる理由を説明したこと ・ その説明には物質をつくる基本粒子クォークが自然界に少なくとも6種類必要だと予言した ・ 「小林・益川理論」と言われ、素粒子物理学の「標準理論」に発展した

「CP対称性の破れと小林・益川理論」 
 
       
■対称性の破れを描き出した三人 :          
なぜ非対称性の破れがあるのか・ 3人の業績に共通するのは「対称性の破れ」
折り紙を真ん中で折ればぴったり重なる ・ 宇宙の誕生時には、物質と反物質が同じ数ある「対称」な世界だったと考えられている ・ ところが今はその対称性が破れて、物質が多くて反物質が少ない非対称な世界になっている ・ 物理の世界では何故そのようになっているのか
   南部理論・・・・・・・・・・・・・・・・ 南部さんは、1961年に素粒子の世界で自然に対称性が破れていく現象を初めて世界で定式化した ・ 宇宙が誕生したころ、物質を構成する基本粒子「クォーク」には質量がなく、光の速度で動き回っていたとされる ・ ところがその動きを鈍らせる仕組みが生じたため、クォークは質量をもつようになったとされる ・ 南部さんは1960年代にその仕組みとして「自発的対称性の破れ」との理論を構築、さまざまな素粒子が質量をもつとの理論が広まった ・ 南部さんは対称性の破れたところに質量の根源があると説いた ・ やさしく説明      
                
■下村さんとホタルイカ :  (日本経済新聞、朝日新聞10月9日夕刊より)            
下村さんの発見と応用・・・・・・・・・ 下村さんの研究対象は、富山湾名物のホタルイカ ・ 発光する生物は数多くいるが、発光のしくみが分かっているのは8種類くらいとまだ少ない ・ 下村さんへの受賞理由は「緑色蛍光タンパク質(GFP)の発見と開発」 ・ 発光するクラゲから緑色に光るタンパク質を取り出した ・ 蛍光タンパク質は、医薬品開発などバイオ関連で欠かせない道具になっている    
   協同受賞者・・・・・・・・・・・・・・ 下村さんは米国沿岸に生息するオワンクラゲからGFPを抽出、発光の仕組みを解明した ・ さらにコロンビア大学のマーティン・チャルフィー教授が他の生物の細胞で光らせ、カリフォルニア大学のロジャー・チェン教授が緑以外の色も出せるように技術を発展させた        
   蛍光タンパク質・・・・・・・・・・・ クラゲやさんごなどの生物が体を光らせるために使うタンパク質 ・ 今回受賞対象となったのはGFP(緑色蛍光タンパク質)で緑色に光る ・ GPFをタンパク質にくっつけて細胞に入れると、緑色に明るく光るため細胞の様子がよく分かる ・ この作用を利用して遺伝子組換え食品の開発や病気の原因解明などバイオ関連で広く応用されている ・ GPSはよく光るため、これを他のタンパク質につけて、がん細胞や神経細胞に入れると、細胞がどのように働いたり成長したりしているのかが手にとるように分かる ・ がんやアルツハイマー、糖尿病など数々の病気の医薬品の開発に貢献した      
生命の観察に革命・・・・・・・・・・・・ 下村さんらの成果は生命の仕組みを観察する革命であった ・ 生きたままの細胞を観察できるようにする活気的な発明であった ・ GFPを使用する試薬は米国企業で生産され、研究機関や製薬会社で活用しているが武田薬品の子会社和光純薬工業からこの試薬品がこのほど発売された          
■今次のノーベル賞受賞者・・・・・ 近年ノーベル賞の単独受賞が減っている ・ 章を3人で分けることが多い ・ アインシュタインのような天才科学者が一人で学問を切り開くことは難しくなってきた ・ 従って同じ分野の研究を複数の学者が数年、数十年かけて研究しつづけ、その結果受賞に結びつくということが多くなった ・ こうしたことから古い研究がノーベル賞受賞になったり、複数学者の協同受賞が増えてきている