ブラジルの世紀に落とし穴 (Newsweek 10月14日号より) |
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■政治的には不安多い国だが : |
最も注目の新興国になった・・・・・ |
IOC(オリンピック委員会)は10月2日、リオデジャネイロを2016年夏季オリンピックの開催都市に、2014年にはFIFAサッカーワールドカップがブラジルで行うことが決定されている ・ オリンピック開催決定の夜、ブラジルでは数十万人の市民が全国の広場や通りでドンちゃん騒ぎを繰り広げた ・ ブラジルにとっては、遅すぎたデビューといえる ・ 駆ってのブラジルは新興国中での落第生であったが、今やBricsの中でも注目される新興国となった |
期待されている国だが・・・・・ |
ブラジルは中国と並んで、世界経済を回復へ目指す牽引役である ・ 国際金融システムの規制強化案でも、国連安全保障理事会の常任理事国に途上国をという改革案でも、説得力を発揮している ・ ということでブラジルの時代がやってきた ・ だがブラジル政府はスリランカ・北朝鮮・コンゴ・スーダンといった強権国家の人権侵害を不問にしたり、政府に批判的なメディアを閉鎖し議会や最高裁を飾り物にしたりで、政策には不安がつきまとう |
あと7年でなにができるか・・・ |
今のブラジルの外交政策はイデオロギー色が強い ・ 左派的と映るものなら何でも指示すると、元駐米大使ロベルト氏はいう ・ オリンピック開催まであとわずか7年、ブラジルがそれをどのようにして達成するのか、世界は注視している |
ルラ政権2期目・海外投資目立つ |
ル−ラ政権が2期目を迎えたが、同国の近年のマクロ経済指標は安定し、最近は代表的な優良企業の積極的な海外展開が目立っている ・ 中南米地域の1980年代の累積債務問題の背景には公営企業の不効率な経営があったが、1980年代後半以降民営化が進められてきた ・ 民営化により企業が活性化、油田の探査への多額投資などがなされ効果を上げている |
優良企業3社の動向・・・・ |
ブラジルを代表する優良企業3社・ペトロブラス・リオドセ・エンブラエルは完全ではないが民営化が進み、海外での積極展開などあって躍進している |
石油公社ペトロブラス社・ |
石油資源を実質上独占しており、同国で最大売上高の企業 ・ ブラジルは国内の原油自給をほぼ達成し、今後は海外での輸出市場開拓が目標になっている ・ ブラジル産の原油を日本でガソリン等に精製して、日本や中国等アジア市場に供給するための拠点の確保があり、ブラジル産原油は粘性の高い重質油で、中東やロシア等の軽質油に比べ価格が安いことから、ブラジルの製油所を日本にもって精製まで手がけようと同社には戦略がある |
鉄鋼・民営リオドセ社・・・・ |
鉄資源・鉄鋼生産のリオドセ社であるが、2002年には完全に民営化された ・ 近年分野を越えた大型提携・買収の動きが強まり、リオドセも鉄鋼石以外の分野へも参入する多角化戦略を取り、最近では、カナダのニッケル大手企業インコの買収をした 。
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航空機エンブレエル社・・ |
航空機製造メ−カ−のエンブラエル社は世界第4位の民間航空機メ−カ−である ・ 1990年代の終わりに民営化経営の建て直しに成功、航空機は現在ブラジルの完成品輸出の1割程度を占めて自動車産業に次ぐ輸出の柱となっている |
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■国家が牛耳る石油大国のワナ : |
ブラジルは石油で大当たりくじ・・・ |
ブラジルの国営石油会社ペトロブラスが、ブラジル南部の大西洋沖に、2007年に巨大な油田を発見した ・ 海面下7000mの地点の岩や砂層のさらに下方、南アメリカ大陸棚の岩塩層下に驚異的な原油が眠っていることを探り当てた ・ 確認埋蔵量は90〜150億バレル、世界の推定埋蔵量は1兆バレルと言われるので、1%強もの巨大油田を見つけた ・ 試掘の推察によれば、油田の広さはイタリアの半分の広さで、埋蔵量は最大800億バレルにもなろうという |
しかし経済破綻の可能性も・・ |
同時に破綻の可能性も手にしてしまった ・ 石油はカネを生むが経済発展も生み出すとは限らないということだ ・ 過去にオランダ・ナイジェリアなどは天然ガス・オイルブームに沸いて国外から投資が押し寄せ、為替レートが上昇したが、輸出業や国内産業が低迷に陥ってしまったという例がある ・ ベネズエラも然りで石油企業が国有化されてから貧困が続いている |
再生可能エネルギーの国が・ |
ブラジルの再生可能エネルギーの利用率が世界1位の国 ・ 発電電力の8割が水力で賄われ、乗用車の半分がサトウキビを原料ととするエタノールで走っている国 ・ 大油田発見前から収益性の高い石油会社をもち、石油生産量200万バレル/日(埋蔵量200億の1万分の1)、エネルギー自給率100%の国である |
世界第7位の石油生産だが・ |
そこにきて莫大な「天の恵み」 ・ しかもそれ以前にも経済も安定し民主主義が根付き、自由主義のルールを尊重し、ルラというスター政治家が誕生し、ブラジルのは資本や外国企業が集まるようになっていた ・ しかし08年プレサル層油田を発見、埋蔵量を確認して以来、ルラ率いる政府には偉そうな態度が目立ち予測がつかなくなってきている |
ルラ大統領は国有化へ・・ |
ルラ大統領はいう「ペトロブラス、プレサル層は国有化、ブラジルの富を世界で共有する必要はない ・ それは国家の資源なのだから、国際資本に入札させる理由がな」と ・ ブラジルのエネルギー政策が突然左傾化したが、石油だけではなく、1年後の大統領選挙が早くも注目されている ・ 次期大統領候補はルラ指名のルセフ官房長官とセラ・サンパウロ知事だが、今のとこと世論調査では知事の方が人気が高い |
機会損失、勢いは弱まってる |
これでブラジルが挫折するという訳ではないが、機会損失をうけるであろう ・ この国は昔から国家による管理、ナショナリズムへの回帰で不幸をもたらされてきているのだが |
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■ルラ大統領が語るブラジルの民主主義 : |
諭して聞かせるべきが大国・・・・・ |
ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ大統領(64)は、「諭して聞かせるべきが大国のあるべき姿だ」といつも自信にあふれている ・ ブラジル北東部の貧しい農家の生まれ、7歳のときサンパウロのスラム街に移住し、14歳から工場で働いて這い上がった |
Bricsで優等生になってどう・ |
ブラジルは中南米の国々との関係を最優先にし、アフリカとの貿易を重視、中東へも出掛けて行った ・ さまざまな国との結束が生まれ、対等な立場になった ・ この先は国連の安保理の改革であり、いつか実現させるつもりだ |
ブラジルへの投資家はどう・・・・・ |
世界経済危機が始まったころ、世界は生産をおさえるなどしたが、ブラジルの自動車は消費税を下げ、低い金利でローンを組めるようにし、その結果自動車の販売台数は記録を塗り替えた ・ すべての国がブラジルや中国のように迅速に対応をとっていれば、世界経済はもっと早く回復できたはずだ |
他国が学べることはどう・・・・ |
国家には重要な役割りと大きな責任がある ・ 国が民間企業を管理するのはよくないが、社会と協力し成長を促すことはできる ・ ブラジルには国営銀行があり、ローンの貸し出しにおいて重要な役割りを果たしている ・ 他国ほど経済危機の被害が大きくなかったのは、こすした金融システムのおかげである |
油田見つけたがクリーンへ投資? |
石油で得た資金を、クリーンエネルギーの開発に使っていく ・ 2つは両立する ・ ペトロブラスは昨年バイオ燃料の会社を設立したが、現在河の流れだけを使ってエネルギーをつくり出す水力発電設備も開発中である |
温暖化ガス規制にはどう・・・ |
最貧国において二酸化炭素隔離技術を推進するための基金設立を支持する ・ 各国が歴史的にどれだけの温室効果ガスを排出してきたのか測り、それなりの負担をするように求めたい ・ 条約合意に排出量削減目標が含まれるなら、ブラジルはそれに従う用意がある |
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アジア景気・回復基調へ (日本経済新聞 10月13日より) |
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■インド鉱工業生産8%増加 : |
インドGDP伸び率+6.5%・・・・・・ |
アジアで景気持ち直しを裏付ける数字が相次いでいる ・ インドの8月の鉱工業生産指数が2007年以来の高水準になり、シンガポールもGDPの伸び率が1年3ヶ月ぶりでプラスになった |
鉄鋼消費量 中国+5%・・・ |
世界鉄鋼協会の発表によると、2009年の鋼材消費でインドが日本、韓国を抜いて第3位に浮上した ・ 2009年は世界の鉄鋼消費量は減少したが、2010年は中国・インドに牽引され上昇に転じた ・ 鉄鋼消費量で世界第1位の中国は2010年+5%になる見込みで、世界全体に占める割合も46.7%とほぼ5割になる模様 |
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