平成の農政改革 減反見直しへの攻防 
                ( 週間ダイヤモンド・朝日新聞より )

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減反見直しの是非意見   減反の弊害
減反の元凶と現状
自民党は選挙で右往左往
減反はカルテル・消費者苦痛
減反はJAと族議員のため
 . ミニマムアクセス米
意欲ある農家へブレーキ
石破農相活動への抵抗
 . 劣悪頑強な政治基盤
衰退一途の農業の現状
JAバックに自民族議員
     特集記事のバックナンバー:       掲示板 (チョット関連の話題ありませんか) 


  減反の束縛を如何にして解くか    (週間ダイヤモンド2月28日号より)   
■減反政策は誰のため :   
石破農水大臣がんばれ!・・・・・・ 約40年継続されてきた減反は農家の成長機会を奪い、成長力を低下させてきた ・ 実際はだれのため、なんのための農業政策なのであろうか ・ 「10年先の日本の農業を考えて政策をたてよう」と意気込む石破農水大臣は自民党の農水族議員から猛反発にあっている
   自民党は選挙で右往左往・・ 農林族の主張は「減反見直しなど言い出したら選挙に負ける」である ・ 2007年の参議院選挙では、大規模農家優遇を打ち出した政府に対し、農政の違いを鮮明に打ち出した民社党(個別所得補償制度)に惨敗してしまった ・ つぎの選挙では小規模農家に配慮せざるを得なくなっている ・ しかし世界食料逼迫、外国食料の不安などから、減反見直しは必須、時代の趨勢のものであり、各党にもこれへの対処がほしい
減反はカルテル・消費者に苦痛・ そもそも減反は、コメの価格を高く維持するために、行政指導で生産調整をするカルテルである ・ 独占禁止法に違反するはずであるが、政治力により1970年から継続されてきている ・ 農家に自由にコメを作らせると需要を大幅に上回り米価が急落するので、各農家に割り当てを決め、補助金を支給して生産調整をしている ・ 正しくカルテルである   
   農家の収入の安定化??? 「農家の収入を安定化させ、日本の農業を守るため」とされるが、本当であろうか? ・ 意欲ある農家の成長機会を奪い、総括的に農業のジリ貧化への元凶になっていまいか          
   農協・族議員のため・・・・・・・ 減反政策推進をしてきた政治構造、すなわち農協、族議員、農水省の官僚が頑強な協力関係にあり、減反見直し論議はタブー化されてきた   
■減反の弊害 :          
高いコメ価格の弊害・・・・・・・・・・・ コメの自給率こそ100%を維持しているが、割安な穀物である輸入麦を原料とするパンや麺類に流れ、全体の食料自給率は下がり続けている ・ 減反コメ価格高止まり、高関税でコメ輸入を阻止してきたが、競争力は低下するばかりである     
   ミニマムアクセス米増加・・・・・ WTO(世界貿易機構)からは、高関税保護のペナルティとしてのミニマムアクセス米(一定量のコメ輸入の義務化)が徐々に増加する見込みで、保管負担が財政を圧迫しだしている      
意欲あるコメ生産農家にブレーキ 減反を強く支持する農家は兼業農家である ・ 機械化が進んだ今日、比較的少ない時間と労力で一定量のコメ生産が可能、そして米価が維持され、おまけに補助金が出る ・ これに対してコメ主業の農家、コメ生産に意欲ある農家には、減反で成長機会が頭打ちブレーキとなっている   
   兼業農家多数派で現状維持 コメ作りは農耕地の面積に比例して労働生産性は向上する ・ 競争力向上のためには主業農家に農地が集約化、大規模化する必要があるのだが、減反・補助金制度は逆行である ・ 数の上で兼業農家が多数派であり、減反廃止は支持されないから、政治的にその方向には動き難い     
         
       
■劣悪・頑強な政治基盤の経緯 :   
戦後の歴史の中で築かれた・・・・ 1945年の農地解放で多数の自作農家が誕生、その規模は小さかった ・ そこで肥料、農薬、農機具などの購入や、農作物の販売をすすめたり、企業などへの交渉権を強めたりする目的で農協が設立された ・ 戦後食糧難の時代、農業指導を確実に行う行政的な役割も担ってきた        
   農村部から自民党議員・・・・ 政治的には、自民党が農村部を基盤とすべく、その要望に応える政策をとり、農村部は自民党議員を多く選出してきた ・ 代表格が農林族議員になり、農水省は族議員の要請を政策に反映してきた    
強力な政治で農家を保護した・・・ 厚い保守基盤の存続で、高度成長期には都市部と農村部の格差を抑制する政策がとられてきた ・ 95年まで続いた食糧管理制度(農家から買い上げる米価を政治的にきめた)などで、農家の所得への配慮がなされた
   70年以降減反開始・・・・・・・ しかし、需要量は管理できない ・ 国民の主食、米離れが進むにつれ、コメの供給が過多となり、70年以降減反が開始されることとなった ・ そして生産量を抑制するので、農家の収入が減り、それを補うため補助金を出す仕組みが出来上がった           
               
      
■関心の高い今こそ農政改革のチャンス(石破農相) :           
減反維持か、減反廃止か・・・・・・・ 国民の米食は年間60キログラム/人あたりと一時に比べて半減した ・ 従来どおり生産していたら大規模農家から倒産してしまう ・ だから仕方なく生産調整(減反)を行い、価格を維持している ・ どうすればよいか、答えを見つけなければならない ・ 食と農に国民の関心の高い今こそ改革をするチャンスである 
   国民の農地利用の形態へ・・ 気候、地形、土壌などの条件でみると日本は農業に向いている ・ 水が常に流れて水田などでの連作が可能である ・ しかしアメリカのように大規模化ができない ・ そこで農業を保護すべきとの考え方が国民にもある ・ どのように支援していくか国民のコンセンサスが必要である ・ 農地は「所有する」という形態から「利用する」という形態へ変えて行きたい ・ 多様な担い手が参入できるようにすること、農地の農地外転用を厳しく取り締まることが大切と考えている
選挙前石破発言封じ込めへ・・・・・ 石破氏は、特命チームが取りまとめている国民からのアンケートの結果などを踏まえて改革案を出したいところで、特命チームの中間報告で生産調整に参加するかどうかを選択できる「選択制」や、大豆、麦、飼料米、米粉米への支援拡充策などを盛り込めるかどうかが本当の正念場である    
   石破農相反撃・・・・・・・・・・・・ 石破茂農水相は3日夕、首相官邸で開かれた政府の経済財政諮問会議(議長・麻生太郎首相)で、「骨太の方針2009」に盛り込む農政改革案を提示した ・ 諮問会議は焦点のコメの生産調整(減反)については、生産調整に参加するかしないかを農家が自由に選べ、参加農家だけを所得補償する「選択制」には踏み込まず、先送りした
石破氏「世論」頼りに反転攻勢 減反政…
農政閣僚会合 検討課題を報告
記事本文の続き ただ、政府の関係閣僚会合の下、各省担当者で構成する「農政改革特命チーム」が今月中旬から議論を再開する ・ 8月に予定される特命チームの中間報告取りまとめをめぐり論議が再燃する可能性もある ・ 石破氏の改革案を踏まえ、麻生首相は「平成21年度補正予算に計上された(水田フル活用の助成増額などの)1兆円と制度改革を車の両輪として農政改革を進めることが必要だ ・ 『骨太の方針』には改革の方向性をしっかり示してほしい」と与謝野馨経済財政担当相に指示した
   石破氏の提言・・・・・・・・・・・・ 石破氏の資料によると、生産調整は、主食用米以外の飼料米や米粉米などを生産する農家を助成するために今年度から本格的に始めた「水田フル活用」の実施状況などをみながら、不公平感の解消や農業経営者の創意工夫につながること、大幅な過剰在庫の発生回避を前提に検討するとした ・ 一方で、生産調整参加者に不公平感がある▽水田農業の構造改革が遅れている▽大豆・麦などの作付けが定着・拡大しなかった−という問題も提起し、生産調整の見直しは必要だとの考えを強く打ち出した ・ また「農政改革の展開方向」として、農地法改正による農業生産法人出資規制の見直しや、耕作放棄地を所有者の同意が得られない場合でも利用できる仕組みの創設を提言した (以上:IZAニュースを参考)            
      石破茂のブログページ  
              
                
  減反の攻防    (朝日新聞4月9日より) 
                   
■減反政策が苦しい日本農業の元凶 :         
特命チーム発足・・・・・・・・・・・・・・ 農家の不満が強いコメの減反(生産調整)の見直しが焦点になっている ・ 減反廃止は米価の下落の副作用が予想され、自民党農林族やJA(農協)の反発がつよく実施できない ・ 石破農相が主導で、6閣僚による農政改革閣僚会議が発足し、夏までに中間とりまとめをする事務レベルの「特命チーム」ができた
   特命チームでの議論・・・・・・・ 3月の会合で配られた「主な論点」には、「経営の自由度を高め」「収入が下がった場合には欧米型の直接支払いのかたちで補填」などの文書が並んだ ・ 農水省内で浮上した「減反選択性」という考え方が反映していた ・ 減反を緩めると米価は下がる可能性が強く、そこで参加する農家には税金で所得の一部を補填する、減反選択とがセットになっての案である   
衰退一途の農業生産・・・・・・・・・・ 1960年に1454万人いた農業就業人口は、2005年には335万人と1/4に減っている ・ うち6割近くが65歳以上 ・ 2006年の農業産出額は1984年に比べて約3割も減少している ・ 衰退の原因として風当たりの強いのが減反である ・ 東北4県でのアンケート調査によれば65%が減反見直しを希望している     
   まじめな農家が損をする・・・・ 減反への参加者(7割)も不参加者(3割)も米価は同じだから、まじめに生産を抑えた農家が損をする ・ 減反の目標達成を巡り、地域での対立は深刻である ・ 農家のこどもが農業を継がない理由の一つにもなっている ・ 農家には経営努力が必要ないようになっている ・ 石破農相は「後10年でコメ作りするひとはいなくなる」と危険感をあらわにしている 
                
■農水族が農政改正に反発 :             
JAバックに自民党族議員反発・・・ 自民党の農水族議員は減反廃止には真っ向から反対の構えである ・ 反発の裏には総選挙を控え、自民党の支持組織で集票力のあるJA(農協)への配慮である ・ JAにとって米価下落は死活問題である ・ 全国のコメの約4割はJA全農が販売している ・ コメ60キロ当たり120円〜370円の委託販売手数料を手にする ・ 事業全体の11%に当たる95億円を上げている          
   減反廃止で困る人たち・・・・・ JAの組合員は500万人で、その9割程度は兼業農家かほとんど収入のないひととみられる ・ 米価が大幅に下がればコメ作りをやめる農家も出て、肥料や機械の販売の減少にもつながるとJAはいう            
農林水産分野へ1兆円決定・・・・・ 自民党は党内で、09年度補正予算へ農林水産分野に1兆302億円の投資をすることを決めている ・ 農水分野過去最大の補正予算で、最も金額の多いのは、農地を貸し出す小規模農家への交付金2979億円である ・ また減反対策として、農家へ食用米から他作物へ転作を促す「水田フル活用」に1168億円投じる ・ 麦・大豆への転作農家へは10アール当たり最大1万5千円、資料米などへの転作農家へは同2万5千円を支給するという            
減反論議 選挙の公約では・・・・・ 減反見直し自民公約に盛り込まず ・ 民主党も減反に反対するもののばら撒き政策    
   なにもこの忙しい時期に・・・・ ある自民党議員は「田植えの前、何も今いろいろと忙しい時期に、こんな話を持ち出すことはない」とこぼしている