農協、族議員、農水省の減反を如何にして解くか (週間ダイヤモンド2月28号より) |
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■組織防衛が至上命題の農協 : |
減反見直しには大補償額が要・・・ |
減反をやめコメが増産されれば米価は下がる ・ 減反参加農家の賛同を得るには「補償総額を減反予算2000億円を大幅に上回る額が必要」とされており、この面でも踏み込めない |
民主党の案(財源はある)・・・ |
「個別補償制度」のために必要な1兆円は「国家予算の全体の組替によって生まれれる20兆5000億円の一部を充てる」のだという ・ そこまで抜本的な改革でなくても、農水省の現状予算内にもムダな使い方が多く、それを改善すれば新たな財源はあるはずだとする |
ムダの代表は土地改良・・ |
ムダな使われ方の代表は土地改良事業(農業農村整備事業)である ・ 圃場(田畑)や農道、用水路などの農業基盤を整備し、生産量UPと農家所得の増加を図るとされている(2008年度予算は6677億円) ・ しかし実際には土木工事としての仕事を農村部で作り出し、兼業機会を増やすものの、本来の目的工事をしていないものが多い ・ 減反で休耕地が増えていることにも矛盾する改良整備事業である ・ この陳情も農協から農林族経由で上がってきているものである |
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農家の農協離れが止まらない・・・ |
農協法には設立認可するに当たり「関係市町村及び関係農業協同組合中央会に協議しなければならない」との一項がある ・ 全国の農協を指導・監督する立場にあるJA全中(全国農業協同組合中央会)の都道府県組織の同意がないと農協を設立することができない ・ 新たな競争相手の出現をいやがる地元農協が新しい考えの新しい団体の加盟に同意するはずがなく、農協は旧態依然としている |
農家を苦しめる農協・・・・・・・ |
農協は肥料・農薬などを販売する購買事業で約2.3兆円もの収入をあげているのだが、一般農家には極めて評判が悪い ・ それは農作物を安く買い上げる一方で、農薬や肥料は高く買わせようとしているからである ・ 肥料・農薬共に過半数をしめる圧倒的なシェアを握っているにも拘わらず、ホームセンターなどの小売店で買った方が安いのが実態 ・ 組織維持のために農家を手玉にして儲けに走っている |
全農と関連企業で独占・・・・ |
農協の幹部が曰く、「農協が売る肥料の値段は、全農とメーカーの話し合いによって決まる ・ 全農はメーカの言うがままの費用になっている ・ 全農のマージンも高い」 ・ 全農は昨年まで5年連続で肥料価格を値上げしている ・ 特に原料価格が高騰した昨年は50%もの値上げであった ・ 全農系の大手化学肥料メーカーのコープケミカルはこの時期、株価が跳ね上がった |
農協の経営は思わしくない・・・・・・ |
では農協の経営は安泰かというとそうではない ・ 農協の経営は購入販売事業、金融事業、保険事業の3本柱で成り立っているが、購入販売事業では1000億円の赤字になっている ・ これを金融と共済でカバーし、トータルでは2000億円弱の黒字になっている ・ しかし農家の高齢化でこの先積立金が減っており先行き心許せない |
サブプライムの影響ほか・・・・ |
残るは信用事業(保険)であるが、これは有価証券などの資産運用益に頼っており、農協で吸い上げた82兆円の大半の56兆円を農林中金などに吸い上げているが、サブプライムローン問題での金融危機の波をもろにかぶった ・ 今後はかかる影響で、農協への配当は目減り、農協を支えてきた柱も先細りがみえている |
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■農協はつぶれるのでは・・ : |
一部末端農協は頑張っているが・ |
末端の農協(例:JAひたちなか)では、管内に5ヶ所の直売所を設け、8億近い売上を出している ・ 販売する農作物は地元の零細農家が持ち込み、販売価格も自分で決めている ・ 農協のマージンも一律13%と低い ・ JAひたちなかの組合員は8000人で99%が兼業零細農家 ・ 直売所で地域の人たち25万人が、週に200円でも買ってくれればと意気込んでいる |
農水省の命令でようやく・・・・ |
このように一部の農協は頑張っているが、農協全体としての動きは鈍い ・ 業を煮やした農水省は2005年10月業務改善命令を発令し、全農からやむなく経営改善案が提示された ・ その内容は5年間で全農グループの職員数を25000人から20000人へ削減、コメなどの販売手数料を下げるとのものである |
農協は衰退一途にある・・・・・ |
農水省の外圧でようやく経営改善に着手し始めたとはいえ、この改善案は全農だけのもの ・ 全中などの組織は含まれていない ・ まだ農協であぐらをかいているものは大勢いる ・ 農協が崩壊した方が日本の農業は育つとの論者は多い ・ 前記のような競争力をもつ農協が現れた来ない限り、農協に残された時間は少ない |
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■農協は地域協同組合を目指す : (JA全中常務:冨士重夫氏談) |
日本の農業の衰退状況・・・・・・・・ |
昨年、日本の農業就業人口は300万人割れとなり、その60%が65歳以上となった ・ われわれは集落営農化を推進し、若手が機械を使った農作業、高齢者は肉体作業の少ない農作業をとして農村集落を維持しようと努めているが、農業人口の減少は進んでいる |
具体策に欠如・・・・・・・・・・・・ |
農協の販売購買事業関係は、単位農協が開設するファーマーズマーケット(農産物直売所)など成長分野もある、肥料や農薬などの購買事業は全農を中心とするスケールメリットを考えて行きたい ・ 既存の事業だけでは縮小傾向が続くので地域のニーズに即した新たな立上げ、地域協同組合を目指したい |
減反見直しは地域経済崩壊へ・・ |
農協の見方であるが、「コメの供給が増えて在庫が溜まったら、一気に米価は下落する ・ 兼業農家が立ち行かなくなれば、地域経済は崩壊する」と心配する |
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■民間金融機関の農業への関心が高まっている : |
大規模経営者へ融資拡大・・・・・・ |
山形銀行と七十七銀行は今年2月、農業生産者対象に「ビジネスセミナー」を開いた ・ 三菱東京UFJも、バイヤーと農業生産者のマッチングの機会提供し、融資の可能性を探っている ・ なかでも注目するのが、ノンバンクの日立キャピタルで、農機販売などで600億円もの融資をしている |
民間融資に障壁かずかず・・ |
民間にとって農業融資で最も難しいのが与信審査業務 ・ 農地を担保にとっても法規制で容易に売却できない ・ これらの審査のノウハウを農林漁業金融公庫(日本政策金融公庫)が提供することにより補完するようにはなってきているが、民間による融資はごく僅か ・ 長期融資については公庫の無利子商品もあり、民業の参入を阻んでいる |
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減反攻防 (朝日新聞4月9日、4月15日より) |
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■見直す動きにJA反発 : |
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減反での問題かずかず・・・・・・・・・ |
減反への参加者も不参加者も米価は同じだから、まじめに生産を抑えた農家が損をする ・ 目的とする価格維持効果も疑問視されている ・ 93年米価は60キロあたり2万3千円であったのが、最近は1万5千円と3割強も下落した ・ 流通面の規制緩和や需要減少で価格を支えられなくなっている ・ 世界貿易機関(WTO)の多角的貿易交渉(ドーハラウンド)でも、コメの関税(778%)を維持するのは難しいと予想される |
しかし農水族議員が反発・・・ |
とくに自民党の農水系議員が真っ向から減反見直しには反対 ・ 集票力のあるJAへの配慮がある ・ JAにとって、米価下落は死活問題で、全国のコメの約4割は全国農業協同組合連合会(JA全農)が販売する ・ 60キロあたり120円〜370円の委託販売手数料を手にしている ・ JAの組合員は500万人で、その9割は兼業農家、ほとんど収入がない人たちとみられる |
■改革議論バラバラ : |
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水田フル活用の効果は・・・・・・・・ |
過去最大となった政府の経済危機対策で、農業水産分野でも1兆円以上の支出が決まった ・ 減反の一部見直しである「水田フル活用」にも1168億円の予算がついた ・ 減反を維持する一方で、エサ米などのコメは増産し水田を活用しようとのもので、箍をはめられた農家への自給率向上を狙っている |
無駄遣いにならねばよいが・・ |
農水省には苦い経験がある ・ 過剰生産で米価が下落した07年に減反強化のため、「水田農業活性化緊急対策」で500億円予算計上した ・ 転作農家に補助をしたが、周知が足りなかったため、400億近くが使われなかった ・ そのため米価維持のためコメ800億円を買い上げた ・ 水田フル活用の効果が期待はずれに終ると、農家の不満は強まるばかりとなる ・ 米価は市場に任せるのがよいのだが、減反維持を続けている |
■減反見直し所得補償の試算 : |
減反見直しによる出費・・・・・・・・・ |
減反による価格維持をあきらめ、農家への所得補償に切り替える場合、どの程度の財政出動が必要になるのか ・ 金額が少なければ農家へのインセンティブは働かないし、厚くすればきりがない |
民主党案1兆4千億・・・・・・・・ |
民主党案では、コメ農家のほか、酪農、水産、林業などあらゆる一次産業従事者への所得補償を打ち出した ・ 予算は現在の減反予算2000億円の7倍、1兆4千億円である |
改革意見身勝手でバラバラ・・・・・ |
選挙でばら撒き合戦になっており、一向に長期的な改革議論は進まない |