裁判員の切符は突然やってくる (実務教育出版「裁判員のころがよくわかる本」小林剛監修 より) |
|
|
■調査票の配布 : |
選挙権があれば誰にでも届く・・・・ |
裁判員は20歳以上の選挙権をもつ日本国民のなかから無作為に選ばれる ・ まずはその最初、調査票が送られてくるのであって裁判員になるということではない ・ この段階では「来年一年間、裁判員候補者として裁判所に来てもらうかもしれないです」とのお知らせが届いたにすぎません |
調査票は半年準備で発送・・ |
裁判員が参加する「裁判員裁判」は地方裁判の段階 ・ そこで各地方裁判所は翌年1年間に必要となる裁判員の数を、毎年9月1日までに計算する ・ それを各選挙管理委員会に連絡し、各選挙管理委員会は選挙人名簿の中から、その人数分をくじ引きで決定する ・ そしてそのデータは10月15日までに地方裁判所に送られ11月末〜12月ごろに候補者のところへ通知される ・ 正式に裁判員になるのは、地方裁判所で裁判員が不足して呼び出しがあり、裁判官と話をしまたくじ引きがあって決められる ・ 調査票ではあせる必要はない |
調査票では何を聞かれるの・ |
調査票では、裁判員になれない警察官や大学教授、などではないかや、辞退希望があるか、聞いておくべき個別の事情がほかにあるかなどです ・ 辞退理由については、正当な辞退理由になっているかどうかです ・ 70歳以上の人や、学生、思い病気・怪我をしている人などは、正当な理由として辞退が認められています |
その他の辞退できる理由・・・ |
裁判員は原則としては辞退できません ・ 辞退できる人上記のほかでは、地方公共団体の議員(会期中)、妊娠の日から8週間経過していない、同居人の介護が必要、同居人が重病怪我で通院へつきあいが必要、妻娘の出産でつきそいが必要、事業の重要な用務を自分でしないと莫大な損害を発生する恐れがある場合などである |
調査票で辞退の申し立て方法・・・ |
学生ならば学生証、介護なら介護認定証などのコピーをつける、正確に書いて返送するのがよい ・ 翌年事情が変ってしまう人もいよう、その場合は翌年呼び出し状と一緒に送られてくる質問票にそのことをかけば、辞退理由として認められる場合もある |
うそを書いたらどうなる・・・・・ |
調査票は、誤って裁判員になれない人に呼び出し状が行かないようにするためのチェック作業 ・ この段階ではウソを書いても処罰されないが、証明書などが必要なので正確に返送しておいた方がよい |
■専門家でなくてもOK : |
法律わからなくてもOK・・・・・・・・・ |
「わからない」、「やりたくない」などの理由では拒否することはできません ・ 正当な理由もなく、裁判所からの呼び出しに応じなかった場合は10万円以下の過料を課せられることにもなります ・ 逆にプロの裁判官や弁護士、国会議員や行政機関の幹部職員、大学で法律を教えている先生、都道府県の知事や市町村長などは裁判員になれません ・ 事件の被告や被害者も裁判員になれません |
透明性へ国民が参加・・・・・・ |
立法、行政にはそれなりに国民が参加しているが、司法にはこれまで国民の参加はありませんでした ・ 裁判員制度は、そういう司法の分野に国民も参加して、信頼できる透明な司法にしようということなのです |
各国の裁判制度の比較・・・・・・・・ |
|
陪審員制 |
参審制 |
裁判員制度 |
採用している国 |
アメリカ、イギリスほか |
フランス、ドイツほか |
日本 |
選任方法 |
事件ごと |
任期制 |
事件ごと |
役割 |
陪審員 |
犯罪事件の認定 |
裁判員
裁判官 |
犯罪事実の認定
法解釈、量刑 |
裁判員
裁判官 |
犯罪事実の認定
量刑 |
裁判官 |
法解釈、量刑 |
裁判官 |
法解釈 |
評決方法 |
全員一致が原則 |
2/3以上で有罪 |
多数決 |
|
日本にも陪審員制があった・ |
福沢諭吉がはじめに陪審員制を提言したといわれる ・ そして大正時代に陪審法が成立し、昭和3年に実施された ・ しかし当時の陪審員制度は、陪審員の裁判にするのか、裁判官の裁判にするかを被告が選べたことや、控訴ができなかったことなどで根付かず、昭和18年に廃止となった ・ このように国民の司法参加は日本にも昔からあった |
膨大な時間と不透明解決へ・ |
プロの裁判官だけでの裁判は、正確さを重視するあまり審理に膨大な時間がかかったり、専門用語であって一般国民には分かり難かった ・ それで国民の視点を反映しようとするものであるが、これは諸外国が定着していることがキッカケとなり、平成11年小渕内閣のときに議論されはじめた |
|
|
|
|
裁判員の選出と辞退について (日本経済新聞2007年10月24日より) |
|
|
■裁判員辞退への政令案 : |
市民の事情に柔軟対応へ・・・・・・ |
注目の辞退理由に政令案が公表された ・ 新たに「精神上、経済上の重大な不利益が生じる場合」との設けられ、裁判官が市民ひとり一人の事情を幅広く認めるとの仕組みができる |
介護、育児、病人理由が多・ |
法務省の調査によると、辞退理由で多かったのは介護や育児、病人の世話で手が離せないとの声 ・ 法律では「同居する親族」のケースに限定していたが、政令案では別の場所に住んでいる親族や事実婚相手でも認めることにした |
出産直後のストレスで辞退・ |
「身体上、精神上、経済上の重大な不利益が生じると認められる場合」という項目が加わり、裁判官は幅ひろく市民の辞退の意向を認めることができるようになった ・ 妊娠や出産後8週間以内や、転居なども辞退理由になる |
「人を裁くのはいや」はダメ・・ |
「自分は裁判員制度や死刑制度などに反対をしている」「裁判員に選ばれることが精神上不利益だ」「人を裁くのは嫌」だのといったものは認められるとは限らない ・ 裁判官が個別に判断することになる |
■辞退理由を認可と却下のケース : |
理髪店、中華店のケース・・・・・ |
「理髪店をしており、アルバイトには常連の散髪をまかせられない」「わたしは中華店の店主、家族経営でやっており、手が離せない」との辞退申し出があった ・ 裁判長は理容師のケースは辞退を認め、中華店店主には「なんとか手伝いを確保し、参加してほしい」と説得し納得してもらっている |
海外出張も認められた・・・・・ |
模擬裁判でであるが、公判の期日と海外出張の日程が重なるとの理由で辞退が認められた ・ また人事異動で事務引継ぎに忙しい人も辞退が認められた |
辞退が認められなかったケース・ |
「1ヵ月後に海外留学を控え、準備と引継ぎで多忙」「大学で非常勤講師としての授業がある」「理由が全く記載されてなく辞退とする」などのものは、辞退が認められなかった |
模擬裁判での裁判員選び・・・・・・ |
裁判員選出の模擬テスト:法廷に隣接する小部屋に、呼び出しされた裁判員候補が数十人集められ、検察官・弁護人が同席する中、裁判長の個別質問が始まった ・ 「(被告と関係があるなど)公平な判断ができない事情がありますか?」などと尋かれ、そこで辞退理由を述べたものもいた ・ 質問は一人当たり2〜5分で、裁判長は辞退を認める人と裁判員にしたくない人を除き選出、さらにパソコンで抽選をした |
検察・弁護側で忌避もできる |
本番では検察、弁護側がそれぞれ最大4人まで、不利益な判断をしそうな候補者を理由を示さず忌避できる |