裁判員呼出が来ても慌てない心の準備を (その2) 
                ( 実務教育出版「裁判員のころがよくわかる本」小林剛監修 、日本経済新聞 より )

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裁判員に選ばれたとき慌てないために   日米の裁判員の絞込み
調査票に返事なしだと呼出状が
呼出状と質問状が送られてくる
質問状にウソを書くと罰金
 . 辞退の場合は質問状に理由詳記
裁判員候補者の確率 1/500
裁判員になる確立は 1/5000
 . 米国は戦略的排除型
日本は気配り選任型
米国の選考理由参考に
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  裁判員に選ばれたとき慌てないために   (実務教育出版「裁判員のころがよくわかる本」小林剛監修 より) 
■呼出状がきたら出頭要 :    
調査票の返事なしだと呼出状・・・・ 裁判員になる資格のある人には調査票が送られてくる可能性がありますが、送られてきた調査票に正当な理由で辞退を申し出なかったら、年明けに「呼び出し状」が送られてくる可能性があります ・ 調査票の中から、辞退者と無適格者を除いたところから、呼出状が送付されます。
   呼出状には出頭日程明記・・ この呼出状には裁判の日程が書かれていて、裁判員を選任する指定日に裁判所へ行かなければなりません ・ 呼出状は、選任する上記指定日の6週間前に、当日の予定などを聞く質問表と一緒に送られてきます。  
   呼出しあったこと公表禁止・・ 裁判員候補者に選ばれた人は、そのことを公にしてはいけないことになっています ・ 日常生活の平穏を守り、裁判の公平さを守るためです ・ インターネットなどでの公表はいけません。        
都合つかなければ質問表へ・・・・ 質問状が送られてきた時点で、どうしてもその日程では裁判所へ行けないという場合は、この質問状に理由を詳しく書いて返送します ・ 裁判所に事情を理解して貰えれば、あらためて「呼出取り消し」の通知が送られてきます。    
   質問表で改めて聞かれる・・・ 呼出状と一緒に送られてくる質問表には、前年の調査票で聞かれた、70歳以上、学生などの客観的な辞退理由に加えて、重い病気や怪我、妊娠や出産、仕事の状態など、詳しい事情もあらためて聞かれます ・ 質問表は大切な書類で、ウソを書くと50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。    
辞退したい場合は理由を詳しく・・ 辞退は、その理由が裁判所に認められなければなりません ・ 仕事を理由に辞退を申し出るときは、会社や事業所の大きさ、代わりの人がいないこと、自分が抜けての影響を具体的にはっきり書かなければなりません ・ 出張の予定が決まっていて乗車券や航空券を購入している人は、その領収書のコピーなどを返信すると認められる可能性は高いと思われます。 
   重大な不利益があれば可・・ 規則で書かれている条項には「裁判員の職務を行うことで、自分や第3者に身体上、精神上、経済上の重大な不利益が生ずる場合」とあります ・ 「裁判、死刑がいやだから」は辞退理由になりません。     
候補者に選ばれたら仕事は?・・・ 裁判員候補者に選ばれたら、呼出状に書かれている裁判日程の間は、仕事を休んで裁判に行く準備をしておいた方がよい ・ 裁判の初日に、それも午前中に候補者から約1割の裁判員を選ぶ「選任手続き」が行われる 
   裁判員ならなくば少時間・・・ その時点で、裁判員に選ばれなかったら、帰宅できる ・ 従って裁判員や補充裁判員に選ばれなかったら、その日の午後から仕事をすることは可能である 
   裁判員なったら3〜5日拘束・ 裁判員裁判の多くは3〜5日程度の連続した日程で行われる ・ こうした日程は予め呼出状に書かれている ・ 裁判員になったら原則として裁判中は裁判所へ行かなければならない ・ 途中で職場への電話は可能かも知れませんが抜け出すことはできません
会社に求められる対応・・・・・・・・・ 裁判員制度に参加して、給料を減らされたり解雇されたりすることがないよう、裁判員法で禁止されている ・ また経営者は従業員が裁判員制度に参加する旨を申請してきた場合、すみやかに諒承することが求められているが、有給休暇になるかなど制度は決まっていないので、会社に確認する必要がある  
       
■裁判員になる確率は500人にひとり程度 :   
事件により候補者数が異なる・・・ 最高裁判所の「裁判制度ナビゲーション」より        
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事件数(件) 裁判員候補者数(人)
札幌 70 3500 7000
福井 350 700
東京 255 12750 25500
大阪 306 15300 30600
福岡 126 6300 12600
那覇 27 1350 2700
呼出状50〜100人へ/裁判1件 1件の裁判につき、呼出状は50〜100人の裁判員候補者に送られます ・ 通常の事件では50人程度、審理に多くの日数がかかるような事件では100人程度の裁判員候補者に呼出状が送られます。    
   裁判員制度対象は重大事件 裁判員制度対象となる事件は重大事件で、2007年には全国で2600件あった ・ これを元に計算すると、1年間に13〜26万人に呼出状が送られることになって、有資格者の400〜800人にひとりが裁判員候補者になる(呼出状が送られてくる)確率となります。       
裁判員候補者数には地域格差・・ 裁判員候補者は全国の地方裁判所で選ばれる ・ 従って地方裁判所の管轄内の有権者数や対象となる事件数によって、裁判員候補者に選ばれる確立は変ってくる ・ 大都市の方が裁判員制度の対象になる大事件が多く発生しているので、大都市の方が裁判員候補者に選ばれる確立は高くなる。        
   大阪が高く、福井が低い・・・・ 裁判員候補者になる確率は、大阪が200〜400人にひとりと最も高く、福井が900〜1900人にひとりと最も低い確率になる ・ 因みに東京は400〜800人にひとりです。  
   裁判員になるのはその1割・ 以上は裁判員候補者に選ばれる確率で、実際に裁判に立ち合う裁判員や補充裁判員になるのは、その1/10程度で、全国で5000人にひとり程度になろうと見られています。  
              
■裁判員に選ばれたときの準備 :           
裁判員は刑事事件の第一審担当 日本では正しい裁判が行われるよう「三審制度」が採用されている ・ 裁判所の種類には、簡易裁判所、家庭裁判所、地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所の5種類があって、刑事裁判の第一審はほとんどが簡易裁判所か地方裁判所で行われている。
   重大事件だけが対象・・・・・・ 裁判員が参加する裁判員裁判は、殺人罪や強盗致死傷罪などの重大刑事事件の第一審だけを扱うと決められている ・ これは国民の関心が高く、社会的影響が高く、なおかつ国民負担をなるべく減らそうとの考えからである ・ そのような重大事件のみであって、民事裁判などにたずさわることもない。
交通費は貰える・・・・・・・・・・・・・・ 裁判員に参加した人には参加費ではなく日当が支払われます ・ 裁判員候補者には、一日8000円以下、裁判員や補充裁判員に選ばれた人には、一日10000円以内と決まっています ・ ただし一日の金額であり、反日の場合は減額される ・ この他に交通費を請求できますが、最安価ルートでの計算になります。   
   宿泊費も支払われます・・・・・ 宿泊しなければならない人には宿泊費もOKです ・ これらは口座振込みで10日以内に振り込まれます。   
どんな服装でもよいのか・・・・・・ 裁判所へ行くときの服装には決まりはありませんが、選任手続きをした日にそのまま法廷に参加することが多いと思われます ・ ですので周りの人に不快感を与えないものがよいでありましょう ・ 裁判員の着ている黒い服は「法服」といいますが、裁判員は自宅から着てきた自分の服で出廷することになります。
   携帯電話やパソコンOK・・・・ 裁判中は電源OFFですが、休憩中は使えます ・ 法廷に持ち込むことは難しいでしょう。            
          
        
  裁判員の絞込み・日米での差    (より)        
                   
米国(戦略的排除型) :          
検察・弁護側面接での選択・・・・・ 日本と同じように市民が無作為で選ばれる米国の陪審員裁判 ・ ボストンでの殺人事件の場合、検察官と弁護人が164人を面接し陪審員16人(補充2人含む)を選んだ ・ 法廷に集められた候補者は裁判の概要説明を最初に受けた ・ 裁判は3週間かかる予定で、差し支えある人は挙手を求められた ・ まずは都合のつかぬ人が164人の中から外された ・ 3/4以上が挙手し、免除されたのは「経営する工場は従業員3人、自分が3週間も不在では仕事にならない」「こどもが病気で共働きだから」などなど僅かである
   検察・弁護側の忌避数・・・・・ 候補者の中から、選出陪審員16名なので、検察側は同数の16名を、弁護側も同数の16名を忌避できる ・ 忌避するかどうかには質問への回答で左右される ・ 例えばの検察側の質問 「あなたは状況証拠だけで有罪と判断できますか?」、ここでは「ノー」という人は選ばれなかった ・ 一方弁護側が多用した質問には 「医師以外の専門家の鑑定も先入観なく判断できますか?」、ここで「イエス」といえる人を味方につけたかった。 
   結果選考基準が発表された・ 「知能能力が高い人が欲しかった」「少なくとも大卒以上の人が欲しかった」「服装も重要な判断材料であった」、中高年の男性は「無罪に傾きがち」とのコメントもあった        
有利な陪審員を選ぶコンサルあり 米国では多額の金がかかる企業がらみの民事事件が多く、それへ有利な陪審員をつけようとのことで、陪審員を選ぶための社会心理学的なアドバイスをする陪審コンサルタントという職業がある 
                
■日本(気配り選任型) :              
日米の裁判の違い・・・・・・・・・・・・ 米国では著名な事件となると陪審員選びだけで1ヶ月かかることもある ・ 米国裁判は陪審員制で原則公開(日本は非公開)、陪審員全員の一致で審判される(日本は裁判員と裁判官の多数決)         
日本では理由なく忌避もできる・・ 日本では裁判員の選び方は米国とほぼ同じではあるが、「理由つき選任」のほかに「理由梨選任」もある ・ 検察側、弁護側が理由もいわずに請求ができるようになっている ・ ただし米国では不利そうな陪審員を多数除外できるが、日本では不選任は4人までと限られている。     
   細かな質問はしない・・・・・・・ また検察、弁護側は裁判員候補者に直接質問できず、裁判長に尋ねてもらう仕組みになっている ・ 偏った判断質問ができないようになっている ・ 細かな質問をしすぎると「民」に近い感覚の人が排除されてしまう ・ 東京地裁であった模擬選任では質問はごく簡単で、殆どの候補者の答えは「はい」「大丈夫です」などだったとのこと。