もしも裁判員になったなら裁判の流れ (その3) 
                ( 実務教育出版「裁判員のころがよくわかる本」小林剛監修 、朝日新聞 より ) 

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裁判の流れと注意点   なぜ素人が法廷に
裁判員のすることは
裁判で行われること
検察官の権限と責任は重い
 . 裁判員制度導入への歴史
長引く裁判の短縮化
 提出資料わかりよくなろう
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  裁判の流れと注意点    ( 実務教育出版「裁判員のころがよくわかる本」小林剛監修 より ) 
■法廷に入ったら :    
裁判員が判断することは・・・・・・・・ 裁判員は、審理のあとの裁判官と話し合う「評議」のためにあるので、審理で交わされる発言や、証拠をじっくり聞くこと。 聞くことによって審理の後評議の際に、次の3点を裁判員が判断することになる。 @事実の認定(検察側の起訴事実が認められるかどうかの判断) ・ A法令の適用(どの罪にあたるかの判断:過失致死罪、殺人罪、傷害致死罪、正当防衛など) ・ B刑の量定(どのくらいの刑を科するかの判断)
   裁判員向けに整理しスタート・ 裁判員が参加する裁判員裁判では、あらかじめ検察官、弁護人、裁判官によって、争点を明確にする「公判前整理手続き」が行われる ・ 証拠調べや争点が膨大になり裁判員に多大な労力がかからぬように、裁判を分かり易く準備することになっている          
公判における審理の流れ・・・・・・・ 審理(公判での検察官や弁護人の意見見聞)は手順にのって、裁判長がリードし進めていく   
   @人定質問・・・・・・・・・・・・・・ 氏名、生年月日、住所、本籍、職業 を出廷した被告が訊かれ、どのような人かが確認される          
   A起訴状の朗読・罪状認否・・ 刑事裁判の冒頭で検察側が被告人の前で起訴状を朗読した後で、裁判長は被告人に黙秘権が存在することが告知させた上で、被告人に罪状認否を行う。罪状認否には黙秘権が保障されており、認否をしなくても構わない ・ 公訴事実を認めた場合、審理は主に量刑に関して争われることになる (Wikipediaより)     
   B冒頭陳述・・・・・・・・・・・・・・ 検察官が、証拠に基づいて、起訴状記載の犯罪事実を立証するための事実を詳しく陳述します ・ また事件によっては、例えば、冤罪を主張するような事件については、弁護人が、検察官の冒頭陳述に引き続き、冤罪であることを立証する事実を冒頭陳述として述べることがある    
   C証拠取調べ・・・・・・・・・・・・ 証拠物、証人尋問、被告などの質問を行う ・ 検察官が、申請する証拠を「証拠等関係カード」に記載して提出し、そのカードに記載した証拠の証拠申請を行う ・ なお、刑事事件では、相手方が「不同意」と言えば、裁判所への提出はされない ・ 被告人の自白調書は、自白調書の場合は、検察官が「任意性」があるとして、その点を主張・立証し、裁判所が、「任意性」があると判断した場合は提出される ・ スクリーンが使用されたり、目撃者・被告人・家族などの発言があるので、集中して聞くことになる   
   D検察官による論告・・・・・・・ 証拠調べが終わったら、ここからがクライマックスで検察官による最後の意見「論告求刑」と、これに対する弁護側の意見「弁論」が行われる ・ 被告に最後に発言機会が与えられ審理は終了する(結審)   
   E裁判官と裁判員による評議 模擬評議に参加して  ・ 評議評決について(弁護士委員会のしおり)   
   F裁判の言い渡し・・・・・・・・・ 評決は多数決で決められますが、裁判官1名以上評議員1名以上の賛成がなければなりません ・ 模擬裁判での言い渡し   
■検察官には多くの権限が与えられている :   
検察官には証拠立証の責任・・・・・ 冒頭陳述で検察官がまず事件の内容、証拠などの説明をします ・ 刑事裁判では検察官に起訴事実を立証する責任があり、このため弁護士の弁論の後証拠調べが始まります        
   有罪とならなくば無罪となる・ 刑事裁判では検察官の主張に対して疑問を残さない証明がなされて有罪にならなければ、被告は「無罪」と推定されるという原則がある ・ 疑わしいだけで証拠がなければ有罪とならない    
捜査は警察と検察で2度行われる 検察官は検察官自身で証拠を集めよく調べ、刑法のどの犯罪に当たるかを確認し、起訴するかどうかを決める ・ 刑事事件で起訴できるのは検察官だけであるので、責任は重い ・ 検察官は警察の捜査をもチェックしているのである
   検察官の行う検面調書・・・・・ 検察官面前調書(検面調書)とは、検察官の面前において被告人以外の者(被害者など)の供述を録取した書面をいい、刑事訴訟法321条1項2号により、証拠能力が認められることがある ・ 被害者が死亡などで供述不可能な場合、あるいは書面作成時と実際の公判時における供述が異なったときに、その書面を特別に信用できる状況(特信状況)がある場合に証拠能力が認められる           
  警察官の行う員面調書・・・・ 他方、員面調書は、警察官など裁判官及び検察官以外のの面前で供述した書面をさし、刑事訴訟法321条1項3号で供述者死亡などの供述不能事由の存在に加えて、特信状況がある場合に証拠能力が認められている ・ しかし、ここでいう特信状況は、絶対的特信状況と呼ばれ、員面調書が証拠能力をもつ場面はほとんどないといっていい ・ 実務で問題になるのも、ほとんど検面調書  
起訴猶予にする事件も多い・・・・・ 検察官は、証拠が不十分であったり、軽微な事件で被告が再生する可能性のあったりするものなどにおいては起訴しない「起訴猶予」することがある ・ そのものが多く、したがって実際には検察官の起訴の99%以上が有罪になっている  
          
              
  なぜ素人が法廷に  (朝日新聞20070506 20081017より)    
      
■市民感覚を生かし迅速化 :          
裁判員制度取り入れの源流・・・・・ 90年代半ば規制緩和が進んだとき、「もめごとを解決するのに、裁判は時間が掛かりすぎる」という経済界、自民党の意見があった ・ それともうひとつ「官僚裁判官には任して置けない」とする弁護士中心の運動があった ・ 法律学者たちからも「死刑囚の再審無罪判決が続くことで、わが国の刑事裁判は絶望的」との意見もあった
   量刑が市民感覚から遠い・・・ オウム真理教裁判のように判決までに時間が掛かりすぎる、また一部の判決での量刑が市民感覚からかけ離れすぎているなどの一般批判もあった            
2000年より進み、2004年導入・・ 米英型の陪審員制(無作為に選ばれた市民が有罪無罪を決める)にするか、独仏型の参審制(裁判官と市民が結論を話し合う)にするかで、最高裁は「市民が評決権をもたない参審制」の案を2000年9月に提示した ・ これがきっかけとなって審議会は一気に導入に傾いた ・ 最終的には陪審と参審の二つの制度を組み合わせた日本独自の形に決まった      
   法務省・弁護士会から広報・・ 2004年5月にほぼ全会一致で裁判員法が成立すると、各界は多額の広報費を出してそのPR活動をはじめ、今日の導入への動きになってきた    
                   
■市民参加がうまくいくための条件 :         
長引く裁判の短縮化・・・・・・・・・・・ 最初の課題は「長引く裁判の短縮化」である ・ 現在1事件で法廷が開かれるペースは1ヶ月に1回か2ヶ月に1回程度(多くて月2回)であるので、数ヶ月から1年以上かかる裁判が大半である
   自白の任意性で長引く・・・・・ 次に裁判員が戸惑いそうなのが、「自白の任意性」の争いである ・ 裁判で検察側が自白を有罪の証拠にしようとすると弁護側が対立し、立証するため攻防は延々と続いてしまう
   背景は日本の精密審査・・・・ ン長引く背景にあるものは、日本の刑事裁判の特徴である著しく精密な審理である ・ 裁判官の自白調書や関係者の膨大な調書を読み比べ審理していく ・ 裁判員がどこまで辛抱強く見ていけるか課題である    
被告人の出廷イメージも懸念・・・・ 被告人は出廷の際、自殺防止などのため、運動着にサンダルといったラフなイメージで出廷する ・ これをスーツ姿の裁判員がみるとどうしても犯罪者扱いに見えてしまう ・ これも重要な課題である 
これを見て聞いて分かる法廷へ・・ どれも難題であるが、考えられている対策は、裁判所は連日法廷を開き「数日間で終わる裁判」を目指す ・ 単にスピードアップだけでは空洞化してしまうので、時間が掛かる「自白の任意性」解消のため、警察や検察の調査をビデオにしておくことなどが考えられている ・ また弁護側検察側が対立しているもの、情報量が絞られて争点が明確なものなどに参加できれば裁判員は判断しやすくなる           
   検察・弁護の資料整理促す・ 裁判員参加になると検察側、弁護側のプレゼンテーションの分かり易さが影響することにもなり、両者の資料整理を促すことになる ・ また法廷でのやりとりを全部裁判員がメモすることは無理 ・ そこでその速記内容をコンピュータに記録し、やりとり内容を即座に字幕に表示できるようなシステムが必要になる ・ こうした技術も検討されている