刑罰についての予備知識 ( 実用教育出版「裁判員のことがよくわかる本」小林剛監修
より ) |
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■刑罰の目的 : |
国が制裁を与える意義・・・・・・・・・ |
刑罰とは、罪を犯した者に対して国が制裁を加えることであり、個人的な復讐などは認めさせず、国が実行するところに意義がある ・ 刑罰を受けた者の再犯を予防する目的もある ・ また一般の人が知ることにより、犯罪を予防する効果もある |
死刑はどのように考える・・・・・ |
人権を保護する近代国家において、刑罰は残虐なものであってはならないと、憲法第36条で規定している ・ 人の生命を断つ死刑は残虐な刑に当たるのではとの意見もあるが、現在の刑では残虐な刑に当たらないとされている ・ 残虐な刑罰とは、一般的に不必要な苦痛を伴う刑罰をいうとの解釈である ・ 最高裁も死刑そのものは残虐な刑罰にあたらないが、その執行方法等がその時代と環境において人道上の見地から一般に残虐性を有するものと認められる場合(例えば、火炙り、磔、晒し首、釜茹で等)には残虐な刑罰となる、と判示しています ・ 日本ではご存知のように監獄内における絞首刑と法定されています ・ Yahoo知恵袋より |
罪あっても刑罰なしの場合もある・ |
責任能力がなければ、罪には問えない ・ 刑法でいう「責任能力」とは、善悪判断など、自分で行動できる能力のことですが、病気などが原因でそのような考えができなくなっている人があり、そのような状態の人は責任に問えないとなっています ・ 「心神躁鬱状態」や14歳未満の少年「刑事未成年」の場合がこれ |
酒の飲みすぎは減刑?・・・・ |
また、責任能力が極端にへってしまった状態を「限定責任能力(状態)」といい、「心神耗弱状態」といって、酒のもみすぎなどでの酩酊状態などが上げられます ・ 上記の「心神喪失状態」の場合は無罪、後記の「心神耗弱状態」の場合は刑の減刑をすることになっています |
14歳未満は責任無能力者・・ |
日本の刑法では、0歳〜14歳は責任無能力者で、刑事裁判にはかけない、罰しないことになっている ・ ただし、刑罰に該当する行為をした場合は、家庭裁判所の判断で児童自立支援施設や少年院に送られるなど保護処分を受けさせることとなっている |
16歳以上は刑事裁判へ・・・・ |
14歳以上〜20歳未満未成年者の場合は、家庭裁判所が選択権をもっている ・ 保護処分がふさわしいと判断すれば少年院送致などの保護処分にするが、刑事裁判にかけたほうがよいと判断すれば、検察官に送致する ・ これを「逆送」と呼んでいる ・ 2007年11月少年法改正により、16歳以上で故意に犯罪を犯し人を死なせてしまった場合には、原則として逆送されることになった ・ この逆送事件は裁判員制度で扱うが、14歳未満のものについては裁判員制度では扱わない |
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■被告にはこんな人も : |
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外国人、高齢者、障害者の場合・ |
被告が外国人、高齢者、障害者であっても裁判の進め方には変わりはない |
外国人の場合・・・・・・・・・・・・ |
被告が外国人の場合も裁判員制度で扱う ・ 因みに2007年度には裁判員制度の対象になりそうな外国人の事件は全国で210件あった ・ 通訳を介して裁判が行われるので、多少時間が長くかかる |
高齢者の場合・・・・・・・・・・・・ |
高齢者の場合に量刑を判断するときには、被告の年齢を考慮するのがこうれまでの裁判の傾向であった ・ 80歳の被告の懲役15年では意味が違うということです ・ 裁判員はこれまでの基準に従う必要もなく、世間感覚で決めて構わない ・ 疑問があればどんどん裁判官に質問するのがよい |
再犯の場合は刑期は増える・・・・ |
刑法では「懲役刑が終わった日から5年以内に罪を犯して、その者を有期懲役に処する場合、再犯とする」と定義されている ・ 3犯以上の者もいるため、「累犯」という言い方もしている |
「累犯過重」刑期2倍へ・・・・・ |
裁判員制度の評議では、プロの裁判官よりこのあたりのことの説明があろうが、量刑は初犯と異なってくるので加重量刑を考慮することになる |
社会の受入態勢にも問題・・・ |
2006年度の検挙者のうち、再犯割合は38%にもなっていた ・ 裁判員制度の対象ではないが、その多いのは窃盗、覚せい剤取締法違反などである ・ 強盗や強姦も再犯が多いのだが、2度目は別の罪状で検挙されることが多い ・ 一度過ちを犯した人に対しての社会の受入態勢にも問題があると指摘されており、ただ量刑を過重するだけでなく、事件の背景も考慮する必要がある |
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■刑罰の種類、状況 : |
刑罰は大きくは3種類・・・・・・・・・・ |
刑罰は大きくは、生命刑、自由刑、財産刑の3種類に分けられる ・ 生命刑は死刑、自由刑は懲役(刑務作業あり)、禁固(刑務作業なし)、拘留(1〜30日未満)、財産刑は罰金、科料(1000円〜10000円)である |
懲役と禁固刑・・・・・・・・・・・・ |
懲役は自由を奪うだけでなく強制的に刑務作業をさせる刑 ・ 勤労意欲を高め、仕事に役立つ知識や技術を身につけさせる目的もある ・ 禁固刑は自由を奪うだけの刑であるが、多くの受刑者は希望して刑務作業をしているようである |
死刑は確定から6ヶ月で執行・・・・ |
死刑は刑が確定してから6ヶ月以内に執行しなければならないと決まっている ・ 法務大臣が命令を出し、命令があれば5日以内に執行しなければならないことも法律で決まっている ・ これらの法律は訓示規定で強制力はない |
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■執行猶予と仮釈放 : |
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刑務所、拘置所、留置場・・・・・・・ |
警察に逮捕されたあと、身柄を拘束されている人を収容する施設が各都道府県にある留置所 ・ 起訴されると刑事施設に移される ・ 刑事施設には刑務所と拘置所があるが、拘置所は裁判刑が確定していない未決交流者を収容する施設、死刑判決を受けた人間も刑は自由刑でないので刑務所には行かず拘置所へ収容される ・ 刑務所の生活はとても規則正しく、7時起床で、刑務作業を行う ・ 刑務作業は、木工、縫製、炊事・清掃、自動車整備・溶接などいろいろある |
無期懲役受刑者への仮釈放・・・・ |
無期懲役受刑者には仮釈放が認められている ・ 厳罰化を求める世論は強いなか、仮釈放であるが、仮釈放されている受刑者の平均入所期間は31年強になっている ・ 2007年現在無期懲役受刑者は1670人いる |
世界では死刑廃止の方向 |
無期懲役は社会復帰の可能性がないので残虐な刑ではないかという意見もあるが、世界でも恩赦の可能性を残しているところが殆どである ・ また死刑については、世界133カ国で廃止、25カ国で執行となっており、廃止の方向に進んでいるといえる |
社会で更生可能者に執行猶予・・ |
たとえば「懲役2年、執行猶予3年」の判決だとしたら、3年間まじめに暮らせば、一度も刑務所に入らなくてもすむということ ・ 執行猶予がつけられるのは、3年以下の懲役と禁錮、50万円以下の罰金刑の3つだけ ・ その期間「善行を保持すること」「住所変更や海外旅行のときには保護観察所長の認可を受けること」おなどを遵守せねばならないが、守らないと執行猶予が取り消され、最初の判決でだされた刑で受けることになる |
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法廷は既に様変わり (朝日新聞 より) |
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■21日裁判員制度開始に向けて : (朝日新聞 5月21日より) |
公判前の整理手続きで早くなる・・ |
裁判所は毎年こんなイメージがつきまとったが、集中審理で時間を短くする対策が進んできた ・ 最も象徴的なのが05年秋から始まった公判前整理手続きである ・ 公判開始前に裁判官・検察官・弁護人が集まって審議計画を立てるようになったことである |
検察官の証拠開示も進歩・・ |
従来は検察側が審理の途中で新たな証拠を開示することがあり、そのたびに弁護側が弁護方針を練り直しした ・ だがこれからは審理前の段階で立証にともなう証拠はすべて開示しなければとの決まりになった |
取調べの録音録画も進歩・・・ |
従来は取り調べの様子を記録した「調書」が、纏め方で争いがあったりし裁判が長引く一因になったが、録音・録画を検討されるようになった(月間150件ほど録画されている) ・ こうした映像のほか、事件の構図を分かり易くするために、イラストや現場写真なども多用されるようになってきており、法廷の様子は様変わりしている |
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■伝わりきらぬ参加意識 : (朝日新聞 5月22日より) |
多くは参加に消極的・・・・・・・・・・・ |
消極的な理由で最も多いのが「裁くことへの不安」、「正しく判断する自信がない」、「人を裁くのに抵抗がある」などである ・ |
裁判員制度問いただす会・・ |
裁判員制度を問い直そうとの議員連盟が超党派でできており、この会からの意見には、「裁判員に課せられる(守秘義務)の罰則が重すぎる」、「無罪と判断しても量刑の評議に参加しないといけない」などが出ている |
3年後に見直す規定がある・・ |
裁判員法には3年後に見直す規定になっており、裁判員を経験した市民からも疑念が出てくれば、改正の気運が高まる可能性がある |
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■リンク集 : |
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l裁判員制度について・・・・・・ |
Wikipedia裁判員制度 ・ 裁判員制度とは ・ 裁判員制度導入に当たっての議論 |
裁判員制度の問題点・・・・・・ |
裁判員制度を考える ・ 司法そのものの本質、役割を考えよう ・ 裁判員制度の問題点 |