熟年の品格忘れずに (日本経済新聞2007年7月29日より) |
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■若者から見たマナー違反 : |
若者批判の前に自分を見直せ・・・ |
「この頃の若いひとの行儀は悪い」「年長者への態度がひどい」などというようになったら、年をとった証拠 ・ 自身の振る舞いにも結構目にあまるものがある ・ 本人は無意識でも結構マナー違反、品格を欠くものが意外とある、検証する |
演劇鑑賞時には静かに・・・・・・・・ |
能、歌舞伎、文楽、新劇、オペラなどなど演劇のジャンルにもよるが、観客のマナーは若い人は比較的ちゃんとしている ・ 中高年で周りに迷惑をしても気づかない人がおり困る |
周囲への迷惑に鈍感になる・ |
幕間に一杯やった男性が、こっそり靴を脱いだり、いびきをかいたり、買い物袋をがさごそしたり、長くされると気になる |
年を取ると行動遅く嗅覚鈍る |
周囲への迷惑には鈍感になる ・ せきがでないように飴をなめるとか、包装紙が破れずカサカサさせたりするので慎むとか配慮がいる |
迷惑をかけない要領・・・・・・・ |
ある年老いた主婦はそのような迷惑をかけないようにするため、あることを決めているという ・ @持ち物を少なくする ・ A個別包装の飴を封をきってバッグに入れておく ・ B膝から落ち易いプログラムはバッグに入れる ・ Cオペラグラスは首からかけておく ・ Dお手洗いは済ませておく |
こんな小言も大変迷惑、マナー違反です |
電車の中で小言をする・・・・・ |
電車で若者が脚を組んで座っていると「マナーがなっていない」と小言 ・ 若い女性がシルバーシートに座っていると、また横に買い物袋を置いたりしていると小言をして譲らせようとする |
・レストランでやたら小言・・・・ |
食事が遅かったり、またちょっとしたことで、ウェイトレス、ウェイターにクレームをつける ・ そして「わかっているか?」などと小言する |
美術館で大きな声で小言・・・ |
大きな声で「この作品はどうのこうの〜」と説明をする ・ 掻き分けて前へあつかましく進み出る(電車のホームでもよく見られる) |
「年を取ると昔話が多い・・・・・・・・ |
年寄りの耳障りな話の例:「あいつは偉くなったが、昔は自分の下にいた」といった無内容な自慢話が多い ・ そんな人にかぎって、若者の未熟な点を蔑み学ぼうとしない ・ 約束時間も守らず平然としている |
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■女子高生に聞きました結果 : |
いやなおじさんワースト5・・・・・ |
@座席など電車内での違反99例 ・ A道路の横断、立ち話、ポイ捨てなど歩道での違反70例 ・ B若者、店員などへの傲慢で尊大な態度50例 ・ C大声の会話43例 ・ D駅・バス停・スーパーなどでの割り込み34例 |
その他にもこんな例が・・・・・・ |
「電車内で席を譲れとばかりに、睨まれたり、傘でこづかれた」 ・ 「強引に割り込んできた」 ・ 「席を譲ったら、としおり扱いするなと怒鳴られて」 などなどもあった |
この程度も女子高生には目障り・・ |
横断歩道以外で渡ろうとする老人・それもノロノロ ・ コンビニや飲食店で小言をいうえらぶった人 ・ 電車の中で大声で携帯をかける人 |
年配者、若者相互の理解が必要・ |
若者は年配者に敬意も必要で、相互に理解するべきところも多々あるが、年長者がマナーを守ることで、若者もマナーの大切さを学んでいく、となればよいのかも知れない |
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品格のある老い方 (大和書房、エッセイスト松永伍一著 「老いの美徳」 より) |
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■人間としての品格 : |
気持ちゆとりが人間を厚くする・ |
昔から日本では中庸の生活、生き方があって、仕事に失敗しても「まあまあの生活できればいいじゃないか」との考え方、そうした気持ちのゆとりが人間を厚くしてきた |
スポーツでの日の丸は美しい・・ |
スポーツでの日の丸をみると日本に生まれてよかったなあとの感動を覚える ・ 日の丸、美しい国日本を大切にして行こう ・ しかしなぜかこのごろは寂しき貧しき覚えの国となってきている ・ 社会は不安や不信感だらけ、政治も然り、国家に対し無関心の風潮は危ない ・ 大勢の悪人が英雄に見えてくることにならぬよう、国民は見ていかなければと思う |
素朴な関係から平和始まる・・・・ |
名前は知らぬけどよく出会う人に挨拶し始める、笑顔でコミュニケーションが成り立つのは世の中平和の始まりである ・ ゆっくりと和がひろがっていく風情、これが社会に平和をもたらす |
心の扉を開けておく・・・・・・・・・・ |
家庭内ではどうでもいい会話のできやすい空気が大切 ・ 今生きている、今というときの感情 ・ それらを思う心のゆとりが落ち着きをもたらす、品格はそうした気持ちのあり方である |
ほどほどに生活できればよい・・ |
金持ちにならずとも、ほどほどに生活できればよいと思う ・ だが自分を安売りすることはするなと自分に言い聞かせてきた |
■若いお母さん達を励ます : |
大切にされているとの感覚を・・・ |
こどもの頃に愛された気持ちがあるとゆとりを持ちやすく、またないと軌道を外れ犯罪を起こすような人も出てくる ・ 親子関係のスタートは、赤ん坊が母親に抱かれて子守唄をきくような原始的な形でなければならない |
貧しさと浪費との関係・・・・・・・・・ |
生活の中に節約だとか倹約の気持ちが必要 ・ 欲望ばかりがあると、金遣いが荒くなり、はては家庭内暴力事件に発展してしまうことすらある ・ 欲望にかられても、一歩引くという抑制心をもつことが必要である |
動物の子育てから学ぶ・・・・・ |
誕生から幼育へとくっつきあっていることが大切 ・ 体温と体温のつながりを、こどもはおおきくなってもずっと覚えている |
子守唄を知らない母親たちへ・・ |
子守唄を知らなくてもよい、学校で習った歌、知っている歌を歌えばよい ・ うるおいのある二人の世界をつくればよい |
■老いたる母へ : |
老いた母への賛歌・・・・・・・・・・・ |
わたくしどもが生きていることができるのは、母親からの愛情から始まったと考える ・ そして母が年を取り寝込んでしまうようになったら、こんどはこども側が面倒をみなければならない ・ 愛情の原点になる子守唄を唄ってもらった、こんどは母守唄を歌って上げなければいけない |
母からのはなむけの言葉・・・・・・ |
田舎から東京へ出るとき、母から「東京でだめだったら、いつでも戻ってきなさい」、筆者はモノ書きであるが母から「松本清張のような人殺しの作品はつくらないで」とはなむけの言葉をもらった ・ そのことを忘れず、モノ書きを進めてきた ・ 母の存在が背後に大きな力になっていたと思う |
母への最後の手紙・・・・・・・・・・・ |
母へ書いた手紙360通になるが今も保管してある ・ 母がなくなってのお棺へ手紙を入れようと机に向ったがなかなか書けない ・ 書けたのは「母上様、私を生んでくださって、有り難うございました」の一行文だけであった ・ 究極のことばはこれしかないと思え、この文を棺に収めた |
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■介護疲れの危険性 : |
介護の中での殺意・・・・・・・・・・・ |
2005年妻は卵巣がんで死去した ・ 67歳であった ・ 末期がんの症状をみていて、抗がん剤の治療を受けることが如何にしんどいものであるかわかった ・ 栄養剤を入れないで、自然に痩せて枯れていくというのが理想なのであろう ・ 楽にしてあげたいとの殺意がわいてくる |
我侭を周りが包み込む・・・・・・・・ |
健康で病気などしたことのない妻だったものだから、突如病人になるといろいろと我侭がでてくる ・ 患者はなにをしてもダメなのでいらだってくる ・ 介護する側もつかれきってしまうが、寛容に対処するしかない ・ 血の繋がったこどもの包容力が大切である |
妻の口から「ありがとう」が出る・・ |
妻も外国へ行った話をしだし多少落ち着いた ・ そして「外国いろんなところへ行かせてくれてありがとう」、そして「みんなにお世話をかけてありがとう」と最後に言ってくれた ・ 残った者は安堵し、いままでのしこりやわだかまりが濾過され、きれいな水として流れていった ・ 最後の言葉は美しかった |
お棺にパスポートと手紙を・・・・・ |
葬儀のときお棺には妻のパスポートを入れた ・ それと私からの最後の手紙を持たせることにした ・ 手紙は妻が亡くなった夜に書いた ・ 「二人の娘を産んでくれてありがとう ・ あちらでみんなを見守り、ゆっくり待ったいてくれ ・ とにかくありがとう」と 「ありがとう」に「ありがとう」で返した ・ 妻にとって一つ心残りは、南米アンデスへ行けなかったことであり、一周忌の法要のときその関連の曲を奏でてもらった |
■高齢と言う未経験なもの : |
老化が我がことになったとき・・・・ |
道を歩いていて知っている人に出会うと、足の運びが遅くなったとか、腰が曲がってきたのが気になるが、自分もそうだと思うとドキンとする ・ 誰にも加齢は襲ってくるが、それに対応する力、早くから心得ておきたい ・ 80代、90代の人が多く元気な昨今、めでたいことではあるが発破がかかる |
未経験なことに取り組んで行く・・ |
高齢化が進むと若年層も大変で、個人も国家も未知なる世界へと進んでいる ・ 身内、連れ合いの面倒を見るというのが現実となるのが分かっていながら、対応策がたてられない ・ それを考えるのがよ老い方だろうと思うもののなかなか難しい ・ 前もって見ておく計画しておけるとよいのだが |
遺書を書くことが活力になる・・・・ |
遺書は自分史の最終章のようなもの ・ 人間関係を観察すること、自分を見つめることで、これが生きていくうえでの一種の活力になる ・ 生きていながら、自分の死後のロマンまで含め楽しむという、極めて贅沢な感覚を味わうことができる ・ 詩人の茨木のり子さんは見事な遺書を残した ・ 孤独死であったが、遺書として文面が綴られていた ・ 「このたびわたくしはくも膜下出血にてこの世におさらばすることになりました〜〜弔問の品はいりません〜〜おつきあいさせていただいたのは宝石のようで、〜〜深い感謝を捧げます〜〜」 ・ 死の七年前川柳も綴られていた ・ 見事な幕引きであった |
遺書は改訂してこそ意味がある・ |
遺書は改訂していくと、自分が見えてくる ・ 自分の俗物性というか、自分のいやらしさが見えてくる ・ 自分の生き方には主観的要素がつよいが、遺書にしてみると客観的、小説の主人公のようになってくる ・ 改訂に改訂をし、だんだんと簡単なものになっていった |
■道楽をもって毅然と生きる : |
あきらめ上手に・・・・・・・・・・・・・・ |
品格はゆったりと生きている人の中に感じる ・ ベストセラー作家や多額納税者になるとそこから落ちるのがつらく悪循環に巻き込まれる ・ そんなに稼がなくてもと、ほどほどにと自分に言い聞かせてきた |
そよ風を感じる・・・・・・・・・・・・・・ |
そよ風が吹いているときに「いいなあ」と感じられるかどうか、これがゆとりの始まりである ・ 息せき切って短距離を突っ走るのでは危ない ・ とはいえ、間延びばかりしていては長距離を走れない ・ ときどき息抜きして休憩しながら、また走る ・ 自分にあった長距離走破のスタイルがあるとよい |
趣味と道楽の違い・・・・・・・・・・・・ |
自分の才がチョッと発揮できるお遊びが趣味、道楽はお金をつぎ込んで美術品や骨董を集めたりするもの ・ 趣味でやることで大もうけをしようという気持ちになってはいけない ・ 自分で楽しみ、周りの人たちにその楽しみを分けるというのが趣味の世界である ・ 道楽もそれに打ち込み、人にやくだってこそ磨かれる ・ 孫が見て、良いものにふれて成長するのでもよかろう |