原発事故による 海、土壌汚染と健康被害を考える 
                ( エントロピー学会編「原発廃炉に向けて」日本評論社刊行より )

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健康被害のメカニズム   原発事故による海洋汚染 
原発事故による土壌汚染
広島原発の1.3倍の死の灰
放射線について正しい知識を
内部被ばく 晩発障害
 . 低線量内部被ばくにご注意を
生物濃縮と食物連鎖少
魚介汚染は遅れてやってくる
 . 2段階の避難誘導は別物
ゴミの溜まるところホットスポット
汚染ゴミの除去が最優先課題
     特集記事のバックナンバー:       掲示板 (チョット関連の話題ありませんか) 


  放射線がもつ健康被害のメカニズム  (崎山比早子(高木学校、放射線研究官)談)
■危険な使用済み核燃料大量に残存 :   
福島原発の北西部危険地帯・・・・ 北西部の汚染された地域(飯館村、葛尾村、南相馬市ほか)には1000〜3000Kベクレル(チェルノブイリ居住区500〜1400Kベクレル以上)になっており、留まると80mシーベルト/年と被ばくする計算になります ・ 人口30万人の福島市も、1.9〜3.8μシーベルト/時であり、放射線管理を必要とする0.6μシーベルトを超えています
   広島原爆1.3万倍の死の灰・ 福島第一原発の1〜4号機の使用済み核燃料は851tあります ・ これは広島で使われたウラン爆弾63gでしたからその量13000倍に相当します ・ その1%がプルトニウムと言われますので、約8510Kgのがプルトニウムが残存していると見られます ・ 拡散されないよう、冷やし続けなければなりません
1ミリシーベルトとは・・・・・・・・・・・・ 1mSvを被爆するということは、細胞の核に平均して1本の放射線が通ることを意味します ・ 1μシーベルトの被ばくであれば、マイクロは1/1000ですから、1000個に1個の細胞に放射線が通ります ・ 単に数量が1/1000になるということで、放射線は安全な量というものは存在しないことになります(詳細後述)   
               
■放射線の身体に与える影響 :          
放射線について正しい知識を・・・ 放射線について正しい知識をもっていないと、余計な心配をしてしまいます ・ 余計な心配をすることは不安を抱き続ける心理的ストレスをもつことで、この方が放射線よりも影響が大きくもあります ・ 放射線の身体への影響を文科省は教えようとしていないのは問題です     
   内部被ばくと外部被ばく・・・・ 放射線は光のようですが、身体をつきぬけて行きます ・ その際身体の細胞、DNAに傷をつけます ・ 将来ガンになるリスクを残します ・ 外部被ばくはコンクリートの部屋だの鉛の部屋だのとに入ると放射線から避けられます ・ しかし内部被ばくは体内に取り込まれると、持続的に体内に照射するので危険です     
   急性障害と晩発障害・・・・・・ 細胞の核には身体の設計図であるDNAがおさまっています ・ DNAに放射線があたると、複雑損傷ができます ・ 孫勝が複雑でなければ、自己修復をできます ・ しかし一度に大量の放射能をあびると修復がきかなくなります ・ 100〜250mSvをあびると急性障害をうけ、嘔吐 下痢、発熱などを起こします ・ 急性障害から回復したとしても、後にガン、脳梗塞などを起こすリスクをしょいます ・ 100〜250mSv以下であれば95%の人は急性障害を起こさないとかんがえられますので、この線量を急性障害のしきい値といいます
   放射線には安全量はない・・ 国際放射線防護委員会(ICRP)によれば、放射線が少しでもあれば発がんリスクはありますが、放射線量が増加するとそれに比例してリスクは高まるとしています ・ しきい値なし直線説といいます      
文科省による年間限度線量設定・ 文科省は2011年4月11日、小中学校の年間限度線量を20mSvと設定しました ・ これを超える施設では、屋外での授業を取りやめるよう指示しています ・ 短期間に高線量をあびても、長期間に低線量をあびても発がんリスクは同じ意見や、短期間高線量の方がリスク大なる意見ある ・ 低線量でも発がんを大量発生させた旧ソ連テチャ川流域での例もあり、年間放射線量での管理が多くなされている     
       
   
  福島第一原発事故による海洋汚染   (福本敬夫(大阪大学大学院教員)談)
   
■低線量被ばくと発がん :   
これからは晩発性障害が問題・・・ 新聞では「放射線量は徐々に低下しているので大丈夫」だのと報じられているが、これから問題になるのは低線量での長期被ばくによる晩発性障害です ・ 問題にしなければならないのは現在の放射線量だけでなく、累計しての放射線量なのです        
   内部被ばくと外部被ばく差・・ 例えば2万ベクレルのセシウム137による被爆を考えてみます ・ セシウム137から50センチ離れたところに1日立っていたとすると、だいたい0.15マイクロシーベルト(年間55マイクロシーベルト)被ばくしたことになります ・ ところが、同じ2万ベクレルのセシウムでも、これを口から取り込んでしまいますと、年間260マイクロシーベルトの内部被ばくを受けることになります ・ 外部被ばくと内部被ばくとでは5倍の差があります   
   低線量内部被ばくに注意・・・ これが2万ベクレルのヨウ素131だとすると、内部被ばくは年間440マイクロシーベルトになります ・ 低線量内部被ばくはこのように乗算されて影響してきますので、気をつけなければなりません        
               
■内部被ばくによる体内濃縮 :            
生物濃縮と食物連鎖の問題・・・・ アメリカオンタリオ湖での測定結果によると、水中でのPCB濃度を1だとすると、そこに住むプランクトンで500倍、それを食べるアミン類で4.5万倍、さらにそれを食べるマスは200万倍、マスを食べるカモメに至っては200万倍に濃縮されます ・ 生物濃縮というのはけた違いに大きくなっていきます  
   濃縮されやすいもの・・・・・・・ 放射性物質はこれほど濃縮されるとは思いませんが、化学構造がシンプルなもの、油にとけやすいものは濃縮されやすいとされています ・ 生体内でのどこで濃縮されるかというと、体内の脂肪分の多いところで濃縮が行われます ・ マグロでいいますと、脂肪分ののったトロのところへ濃縮されます  
セシウムは筋肉に蓄積・・・・・・・・・ セシウムはカリウム、ナトリウムといったアルカリ金属に属しますので、主に筋肉などに蓄積されます ・ OH系と反応しやすく、脂肪分にも溶けやすいので、体内にとどまっている時間が長いとみられます     
   内部被ばくと半減期・・・・・ もうひとつ考えなくてはならぬのが、生物学的半減期の問題です ・ 一般的にヨウ素の半減期は8日間、ストロンチウムが約30年と言われますが、内部被ばくを考えたときにはこれが変わりヨウ素は138日、ストロンチウムが49年となります  
       
■深刻化する海洋汚染 :          
食物連鎖と生物濃縮で拡散・・・・・ 茨城県沖でコウナゴからと、小魚からヨウ素が検出」されました ・ 海洋中の放射性物質は1週間〜10日ほどで海藻に移ることが分かっています ・ また藻類を主食としているカニやえびの甲殻類も食物連鎖と生物濃縮によって高濃度の汚染をしていくのでないかと大変心配されています
   魚介類への暫定設定値・・・・ ヨウ素137は半減期が8日なので、海に汚染するとは考えずらく、食品衛生法の基準値は考えていませんでした ・ ところがコウナゴから発見され2011年4月政府ははじめて魚の基準値を1キログラム当たり2000ベクレルと設定しました            
  海洋汚染の数年後に魚介汚染 海洋の魚介類の汚染は海水の汚染に比べて1年から、数年遅れて現れてきまさす ・ これはまさに生物濃縮がおこっているからです ・ 高濃度冷却水は増え続けています ・ チェルノブイリの比ではありません ・ 汚染水が海洋に垂れ流しに垂れ流しされぬよう 見張らねばなりません      
       
             
  福島第一原発事故による土壌汚染   (山田国広(京都精華大学人文学部教授)談)             
                   
■汚染の北西方向への広がり :         
政府の避難指示は正しかったか 原発から北西方向へのトレースの広がりは3月17日からの早い段階で想定されました ・ この段階で日本政府の避難指示にはいくつかのミスがありました ・ 避難対象地域を3Km圏、5Km圏、10Km、20Km圏と段階的に増やしていきました ・ 最初から20Km圏避難と設定すべきであったでしょう 
   その後は方向から避難指示・ 水素爆発がある程度納まってからは、その後の避難は第2段階は放射能雲にのって移流し、各地にホットスポットを形成しました ・ 4月に入ってからはまさにこの汚染分布になっており、土壌汚染分布およびその反映である空間線量率分布に従って、北西側に60Kmを超えて避難地域を設定すべきでした  
福島の学校で何が起こっていたか 福島、郡山の市民は食物に注意をお願いするけれども、普通の生活をしてもかまわないとされています ・ 福島市は1.63μSv/Hrで問題はないという感じでした ・ その放射能がどこからきているのかつきつめたところ、道路、運動場、たんぼ、公園などに降り積もったごみが問題なのです ・ ゴミの溜まるところは時間が経てばたつほど放射線量は高くなります        
   高すぎ運動場の放射線基準 文科省は4月19日、福島県内の学校に対して、地面から1mの高さで毎時3.8μSv/Hrを超えたら、校庭に出ないとの制限をしました ・ 年間で20mSv、5年で100mSvであるのでよいとしたのでした ・ 土壌起源にからむ汚染は放射線が、道路、公園、草むらからでます ・  
                
■放射能汚染回復にむけて :             
ダストからの内部被ばくが問題・・・ 空から微細なダストという形でふってくる ・ 強い風が吹けば地上からセシウムが舞い上がってそれを呼吸する ・ 水も汚れている ・ 野菜も食べるし、魚肉も食べる ・ 外部被ばくより内部被ばくのリスクの方が3〜4倍高いといわれています ・ 内部被ばくに関しての基準値がなかなか政府からありません ・ 原発から50Km離れた地域でも、年間20mSvを超えるところはたくさん出てきてしまっている ・ 回復策提案を下記    
   回復策・・・・・・・・・・・・・・・・・・ @ 事故の収束を待つのではなく、がれき除去、汚染対策が急がれる
A 除染で生じた放射性汚泥物質は第1第2原発で東電が管理すべきである
B 事故処理が収束しないと帰れないといわれているが、除染されなければ帰れないのである
C 政府のいう年間5.2mSvを超えるホットスポットは、至急に除染対策に取り掛かるべきである
            
                

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