チェルノブイリ原発事故を見ておこう (その1) 
                ( 「チェルノブイリの放射能」 赤木照夫著・岩波ブックレット 他 より )

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チェルノブイリ事故   原爆、福島との違い
30Km、1200Km圏
セシウム広島の500倍
複雑なソ連製の原子炉
ベクレル・キューリー・レム
 . 原爆・福島との違い
菅首相の海水注入停止
臨界状態での爆発
 . 揮発性で高空で広範囲へ
近傍は不幸中の幸い
スウェーデン、イタリアへ
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      原発の初歩の初歩の初歩  (No.1) 
      放射能の初歩の初歩の初歩 (No.2)  

      原発事故Q&A 収束工程表 (No.3) 
      原発事故の食への影響    (No.4)  
      チェルノブイリ知ると恐くなる (No.6) 
 

 
■死の灰が注いだ86年4月26日 :   
午前1時23分、2回大きな爆発・・・ ソ連チェルノブイリ原発で4号炉が暴走し、つづけて2回の爆発がおきた ・ 広島原爆の1100発分もの死の灰が注いだ ・ 事故の結果そのおよそ10%が外部に放出されたとみられる ・ 10万人以上の人々が避難させられた ・ 直接の死亡者は31人、その中2人は運転関係者で、爆発の衝撃による死亡であった ・ ほかは被爆した消防隊員などである ・ そして被爆での入院者は約300人 ・ このチェルノブイリ原発事故は運転員の操作ミスがそもそもの原因であったと言われている
   セシウムが広島の500倍・・・・ 半減期が30年のセシウム137が広島原爆の500倍もの広い範囲にばらまかれた ・ これは長期にわたって食物を通じ、人間の生命に影響を与える危険性が高い ・ このように大量の死の灰がまきちらされたことが、この事故の最大の問題である
               
■大容量チャンネル型炉が爆発 :          
燃料棒は18×1660本の構造・・・・ 事故を起こした原子炉は、大容量チャネル型炉と呼ばれ、ソ連が独自に開発した複雑な構造をした炉(黒鉛減速軽水冷却タイプ)である ・ 燃料はペレット状の二酸化ウランで、遅い中性子で核分裂をするウラン235をふくむ割合を濃縮によって2%まで高めてある ・ それをジルコニウム・ニオブ合金の管に収めたのが燃料棒で、18本が束ねられて1本の燃料チャンネル構成されている ・ チェルノブイリ4号炉の場合、燃料チャンネルの数は1660本であった   
事故の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2回の爆発で、燃料のおそらく半分が粉々になって、原子炉の下部と、外側の放射能遮蔽のタンクを壊した ・ 炉心上部のクレーンや燃料交換器、重さ280tの蒸気ドラムも吹き飛ばされた ・ 現場目撃者の証言によると、赤い大きな火の塊が吹き出し、火の手が30か所ぐらいから一斉に上がった ・ 炉内にあった1700tの黒鉛10%、170tが燃えた   
   3億キューリーの死の灰放出 炉内に生じたキセノンとクリプトンを主体とする稀ガス100%が放出された ・ ヨウ素、セシウム、テルルのような揮発性の核分裂生成物の10%が漏れ出た ・ またバリウム、ストロンチウム、プルトニウム、セリウムなどの核分裂生成物もその3〜6%ほどが飛び出した   
   原爆の200倍、・・・・・・・・ ちなみにチェルノブイリの放出量は3億キュリーで、広島原爆は150万キュリー程度(200 分の1と推定)になります ・ それと比べると、福島原発2号機の汚染水だけですが、1万トンで460万 キュリーになります ・ 1キューリー=3.7×10の10乗ベクレル (1秒間に1個の原子核が壊変することを1ベクレルという)    
       
■原爆と原発事故の違い :   
原爆は全身にガンマ線・中性子線 福島、チェルノブイリ原発周辺には何十年も人が住めないといわれているが、広島や長崎では原爆後都市復興住めるようになりました ・ 下記します        
   原爆の放射量(極めて大)・・ 原子爆弾の放射線には「初期放射線」と「残留放射線」の2種類があります ・ 初期放射線は原子爆弾が爆発したときに発生する放射線で、ウラン(広島)プルトニウム(長崎)の核分裂によって生ずるガンマ線と中性子線などです ・ ガンマ線と中性子線は大きなエネルギーをもっており、人体には大きなあ障害を与えます ・ 広島の原爆の放射線量は
  爆心地(0m地点) ガンマ線:12万3000ミリシーベルト
              中性子線:3万5000ミリシーベルト
  500m地点     ガンマ線:3万5000ミリシーベルト
              中性子線:6400ミリシーベルト      (原爆先生の特別授業より)
   塵は世界へ局所蓄積は少に このように非常に強い放射線が放出され、爆心から1Km内の人は即死しました ・ 原爆の威力は熱線と衝撃波というものがあり、爆心直下では3000℃もの超高熱となったため、放射線死よりも高熱による死亡がほとんどでした ・ 広島、長崎の原子爆弾は空中で爆発しましたので、気流にのって世界中にまき散らされたと考えられます ・ 放射性物質が世界に拡散されたことによって局地的な土壌汚染を回避したのでありましょう       
   核分裂は終焉状態(福島)・・ 原発は核分裂をゆっくり起こさせるものであり、さらに福島原発では核分裂を終焉させていたので、初期放射線が外部に漏れ出ることはありませんでした           
  
■チェルノブイリと福島の違い :            
臨界状態にあったかどうか・・・・・・ チェルノブイリと福島の違いは、臨界状態にあったかどうかの違い ・ 臨界状態での爆発は危険な中性子が増えており、放射性物質の放出量が少なくても影響は深刻です ・ 臨界とは放射線ウラン燃料などが核分裂連鎖反応を起こす状態のことをいう ・ 「再臨界」とは、臨界状態にあった原子炉が一旦停止し核分裂が停止しし、しかし燃料が露出・メルトダウンなど制御されない状態になり、核分裂連鎖反応を再起させる状態をさす ・ 福島は再臨界にはなってないが、冷却し警戒する必要がある
   臨界状態にあると・・・・・・・・・ 再臨界が起こった場合、核分裂反応を制御することは難しくなります。核分裂反応を制御できないままであれば、非常に大きなエネルギーが発生するため原子炉内で爆発が起き、放射性物質が大気中に飛び散ることになります。従いまして、再臨界が起こるということは、最悪の事態を招く可能性があるということになります。  
     冷却水注入が重要だが・ メルトダウンした燃料の中では、溶けた燃料の中にウラン235の濃度の高い塊りが出来て、この塊の中で高速中性子によるウラン235の自発臨界が起こります ・ これは、冷やすことしか防ぐ手立てはありません ・ 冷やして燃料が固体になれば、新たな塊は発生せず、自発臨界も起こらなくなります ・ 核燃料が露出し溶融した状態だったのですから、例え海水でも核燃料を冷やす方が再臨界の可能性は低くなります     
    管首相海水注入一時停止・ 海水注入の中断問題は、国会で質疑されたが、菅首相は、専門家に「再臨界が起きれば大変なことになる。そういうことも含め海水注入にあたって検討をお願いした」とし、班目春樹・原子力安全委員会委員長は「再臨海の可能性はゼロではない」と回答したとし、菅首相は「注水の時もやめる時点も、直接報告はあがっていなかった。やめろとかやめるなとか言うはずもない」と海水注入の中断には関与していないという答弁の報道あり。海水注入が着手されていたが、菅首相は、臨界による原子炉本体の爆発の回避が最大課題という思い込みがあり、海水注入が原子炉に悪影響しないかという心配になり、関係者に、「大丈夫か?」と怒鳴り散らし、同席してた東電の武黒一郎フェローが慌てて”「菅首相(対策本部長)が海水注入の危険性を問題視している」”と現場に連絡し、海水注入を止めさせ、班目春樹・原子力安全委員会委員長は「再臨界の可能性はゼロではない」と回答し、そして関係者の総論として、海水注入による原子炉の冷却の必要性となり、菅首相も納得し、海水注入が再開したとのこと  傍観者の独り言より       
チェルノブイリは臨界状態爆発・・ チェルノブイリでは圧力容器が壊れ、3億キューリーの死の灰が外に出た ・ 福島では圧力容器は壊れておらず、臨界状態でもないので、死の灰の飛散量はチェルノブイリの10%以下、2000万キューリー程度であろうといわれている ・ 2000万ベクレル×3.7×10の10乗=740000兆ベクレル ・ 福島原発事故も1兆ベクレル/時間以上の放出であるので、原発事故 「レベル7」 となった 
   放出されたもの・・・・・・・・・・・ ソ連の報告書によると、放出されたものは、炉内に生じていたキセノンとクリプトンを主体とする希ガスと、ヨウ素、セシウム、テルルなどの揮発性核分裂生成物、それとバリウム、ストロンチウム、プルトニウム、セリウムなどの核分裂生成物などである ・ 炉内には27億キューリー(広島原爆の1100発分)があって、その10%・3億キューリーが放出されたとみられている 
       
■30キロの立ち退き地域で :    (「チェルノブイリの放射能」赤木照夫著:岩波ブックレットNo7より)      
揮発性死の灰が広くばらまかれた 事故から10日経って火災が沈静化したが、火災では軽い死の灰が2000mの高さまで舞い上がり、はるか遠くまで運ばれた ・ 重い死の灰は現場付近に降った ・ 事故後1週間で、ヘリコプターから炉の上にボロンカーバイト40t(再臨界防止)、ドロマイト800t(消火)、粘土や砂1800t(空気遮断)、鉛2400t(放射線遮断)が投下された ・ しかし熱が上がり揮発性の死の灰が漏れ出し、周囲への放射線汚染が拡大した ・ 死の灰は高空高く巻き上げられたため、現場付近の放射能汚染はさほどひどくはならなかった
   角状に突き出た汚染地図・・ チェルノブイリの100Km四方(半径でいうと50Km強)が今もって人間の立ち入りは厳重に管理されている ・ この地域は1時間当たり0.5ミリレントゲン(5ミリシーベルト)になった ・ 中心部の10Km圏では、1時間当たり100ミリレントゲン(1000ミリシーベルト)であった             
プルトニウム吸入の危険地域・・・・ この地図の範囲には重い死の灰が降った ・ 半減期24000年のプルトニウムは肺に入ると、内部被ばくでがんになる危険なものである ・ 30Km圏内微粒子状のプルトニウムが風などで舞い上がる危険性ありと規制された ・ そのほか放射能の高い微粒子として、ルテニウム106、セシウム144なども降ってきた ・ ソ連政府はこの30Km地域を無人地帯として13万5千人を避難させた ・ 半径30Km地点は1時間当たり1ミリレントゲン(10ミリシーベルト)にもなっていた     
   ホットスポットは80Km圏・・・・ ソ連の報告では80Kmを避難地域としており、合計25万人が避難したともいわれている ・ うち13万5000人は家で避難している間と避難で移動しているときに放射線をあびたが、放射線量は160万人レムであったと報告されている ・ 16万人が10レム(100ミリシーベルト)づつ放射線を浴びたことに相当する ・ 人体への影響がこの程度で済んだのは、大規模な火災や爆発にともなわず、放射能雲が数百メートルだと全員2〜3か月で死亡したであろうが、放射能雲はそれより高く上がったため付近への影響は不幸中幸いした    
                   
■1200キロも離れた地点で :    (「チェルノブイリの放射能」赤木照夫著:岩波ブックレットNo7より)         
     
ソ連黙秘、スウェーデン気づく・・・ 4月26日AM1時過ぎ事故発生であったが、ソ連政府は沈黙を続けた ・ 西ヨーロッパで最初に気づいたのは27日夜フィンランドであったが、公務員ストがあって発表が遅れた ・ 直ちに報じたのは、スウェーデンで2日経っての28日AM8時、原子力発電所で出勤してきた職員により発見報じられた ・ 南北に長いスウェーデンのいたるところで検出され、風向きなどから発生源はソ連であると推定した ・ それでソ連大使館へ通知したが、即答は得られなかった ・ その日2日目の夜9時、モスクワのテレビニュースで短く報じられた  
   スウェーデンで年間1レムに・ スウェーデン全土平均で1平方キロあたり0.22キューリー降下蓄積し、ホットスポットではセシウム137、134が1年間で1レム(10ミリシーベルト)になることが分かった ・ ソ連により近いポーランドではその5倍ほどの放射線量がふったものとみられる        
   ミュンヘンやコモでも・・・・・・・ 4月27日に漏れだした死の灰は、最初北西方向の風にのったが、のちに南西方向に変わりその結果、ミュンヘンでも1平方キロ当たり0.25キューリーのセシウム137が測定された ・ スイス南部でも0.3キューリーになった ・ イタリアのコモでも1.4キューリーがふっていることが分かった ・ その距離、実にチェルノブイリより、スウェーデンは1200Km、イタリアコモは1800Kmになる ・ ちなみに現場から南南東130Kmしか離れていないキエフにふったセシウム137セシウム137は、1平方キロ当たり0.5キューリーにとどまっていた ・ イタリアのコモの方がキエフより高かった ・ この奇妙な事実は原子力専門家の想定を完全にくつがえしてしまった 
                


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